Research Abstract |
本プロジェクトの目的は,従来からのドイツ語動詞分析の成果を活かしながら,(1)結合語句の共起度および(2)構文の意味機能に焦点を当て、ドイツ語動詞の語句結合の、頻度から見た使用実態を明らかにしようとするものである。22年度の主な目的は,「有用性」を組み込む方法論のさらなる精緻化と具体的な事例分析の開始である。 前者に関する主な成果は,言語にとって不可欠な「話者(ダイクシス,視点,捉え方)」「文形成の規則体系」「実際上の使用(言語経済性,認知能力的制限など)」の三つの役割をより明確化し,使用頻度分析の意義をより把握することが出来たことである。「話者」の,たとえば物事の捉え方には複数の可能性があり,同一の事象に関しても,複数の文形成規則による表現が可能である。また,言語使用には,様々な言語経済的要因が関わって来る。これらすべては,言語使用上の頻度として実現されるものであり,言語の使用頻度を分析することによって,上記の三つの役割が解明できることになる。 後者に関する主な成果は,動詞klopfenなどを対象にした分析により,「補足成分」と呼ばれるものの中に,(1)個々の動詞に「従属的な」語句と捉えるべきものと(1)動詞と幅広く結合可能な「自立的な」語句と捉えるべきものとを想定する仮説提示まで辿り着いたことである。同時に,また,「多義的な」動詞の場合の,個々の語義と統語的意味的結合語句の相関性に関しても,その理論的な問題点を明らかにすることができた。 これらの成果は,ドイツでの伝統ある結合価研究を発展解消させ,かつ社会的に意義あるドイツ語研究を創り上げることに大きく貢献するものであると言える。
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