2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520433
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
加納 満 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (80251859)
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Keywords | スリランカ手話 / 類別詞 / 対称性 / 優位性 / 認知的顕著性 / 図地 / 視点 |
Research Abstract |
語レベルの両手サインにおいて対称性と優位性の制約がかかることが知られている。対称性制約は同一の手型と動きを課し、優位性制約は非利き手の手型と動きの種類を制限する。これらの制約は調動性と認知的顕著性に関わるものなので、語レベル以外の文レベルでも同様の制約がかかるのかを検証する必要がある。そこで、両手による同時的表現について検証を行った。 非手指否定マーカーのみで否定ができないスリランカ手話において動詞に後接する手指否定詞は、動詞の否定を両手サインにより、すなわち動詞と否定をそれぞれの手で表示することはできない。同一個体の2つの異なる同時的行為についても両手サインで、すなわち右手と左手でそれぞれの行為を表示できない。 文レベルにおけるこれらの例は、それぞれの手が形態素であるものであるが、2つの個体が関わる移動表現や位置表現については、両手サインによる表示が可能である。この場合、認知的顕著性の高い対象は動きを伴う手型により図として、顕著性の低い別の対象は現実の事態において移動していても静止した手型により地として別々に表示される。このとき優位性制約は緩まり、手型にはかからず手の動きにのみかかる(静止した手型のみ許容)。 更に談話レベルでも複数の文にまたがり、地となる背景情報を表す静止した手型が、図となる前景情報を表す動きを伴う手型と同時的に生起可能である。このときも優位性制約は手型にはかからず手の動きにのみかかる。・ 以上のように、両手サインに関わる制約は語レベルに止まらず、その上のレベルでもかかる場合があり、そして語レベルで最も厳しくその上のレベルで緩くなる。この背景には適切な図地配置がある。適切な図地配置のために、サインを構成する要素で視認度の高い手の動きが抑制されるのではないかと考えられる。また、視点との関連でいうと、個体類別詞が用いられる移動・位置表現は観察者視点からの記述となり、図地配置設定と一致する。
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Research Products
(2 results)