2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520437
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 星児 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40108113)
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Keywords | 朝鮮資料 / 日本資料 / 朝鮮語史 / 日本語史 / 朝鮮王朝実録 / 朝鮮通信使 / 捷解新語 / 音訳 |
Research Abstract |
本研究は日本・朝鮮資料の体系的収集とデータの電子化を基礎として,その分析を通じて諸資料の通観的記述を行うことにある。22年度は,実施計画に従い,韓国や日本の諸機関で文献の継続的調査を行ない,収集資料のデジタル化を行うとともに,従来の日本・朝鮮資料の抽出と分析を行った。以下では,22年度の特に重要な成果と研究作業を挙げる。 1)対馬宗家文庫所蔵の漂着記録および原刊『捷解新語』などの調査 対馬歴史民俗資料館において,上記の資料を含め朝鮮関係の資料を調査した。このうち,漂着記録である『全羅道済州桎義県監李種徳一行云々』に関する資料には,仮名書き朝鮮語が散見され言語史資料となることが確認された。また同文庫所蔵の原刊『捷解新語』については,今まで言及されていなかった20枚近くの「付箋」に注目して調査した。付箋には,仮名書き本文の注であるものが多数ある。現在解読中であるが,これによって本文の新たな解釈が確定したものがある(例えば,「むりやう」に対し「冒段」,「かまに」に対し「牛岩浦」とするなど)。 2)名古屋蓬左文庫所蔵の日朝交流資料の調査 同文庫所蔵の海東諸国記(本文は「紀」)(写本)を調査した。現在,刊本との関係を調査中である。また『享保年中朝鮮人往来記』には,少ないが仮名書き朝鮮語が見られ,「日本資料」としての価値もあることが分かった。あわせて同文庫所蔵の中世・近世の朝鮮語関係資料の調査も行った。 3)日本・朝鮮資料に見られる朝鮮語・日本語例の抽出とデータ入力 前年度は『朝鮮王朝実録』所収の中世日本語の音訳語の用例抽出(15世紀半まで)と入力を行ったが,22年度は,それらの用例の過半をしめる輩行名を中心に分析をおこなった。合わせて『実録』中の日本語表記(二郎三郎など)も分析し中世の名前のパタンを調べた。その結果,音訳のパタンが明確になった(例えば,三郎は三宝羅,三甫羅,三甫老など)。
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