2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520437
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
辻 星児 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (40108113)
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Keywords | 朝鮮資料 / 日本資料 / 朝鮮語史 / 日本語史 / 朝鮮王朝実録 / 朝鮮通信使 / 言語交流史 / 音訳 |
Research Abstract |
本研究は日本・朝鮮資料の体系的収集とデータの電子化を基礎として,その分析を通じて諸資料の通観的記述を行うことにある。23年度は,実施計画に従い,各地の文献の継続的調査を行ない,収集資料のデジタル化を行うとともに,従来の日本・朝鮮資料の分析とまとめをした。また最終年度として言語交流資料の網羅的通史の記述を試みた。以下では,23年度の特に重要な成果と研究作業を挙げる。 1)鹿児島県東市来市美山(旧苗代川)伝来の朝鮮資料の調査 鹿児島県立図書館(旧沈寿官氏所蔵)での調査を行い,未公刊の資料を複写収集した(沈氏より直接許可)。調査した主な資料は,『和館問答』,『韓語訓蒙』『漢民対話』(2種)『交隣須知』などで,デジタル化して言語史的観点からの分析を行った。このほか,同図書館所蔵の薩摩藩文献には文禄慶長役時の仮名書き朝鮮語があることを発見した。 2)西尾市岩瀬文庫の朝鮮本の調査 同文庫所蔵の朝鮮古書の調査行った。それにより『日観要攷』(18世紀前半か)には音訳の日本語があること,『六書三国薬名方言考-(近世後期)・『和韓拾遺』(宝暦時通信使)には仮名書き朝鮮語があることなどを確認し,交流資料として価値があることが分かった。また宝暦時通信使との応酬を記した『桑韓筆語』も同文庫本で確認した。あわせて同文庫所蔵の中世・近世の朝鮮語関係資料の調査も行った。 3)『朝鮮王朝実録』所収の音訳日本語についての論文公刊 2年以上に亘って採集してきた14-15世紀の音訳日本語の概観をしたうえで,太宗7年までの25例を分析し論文として公刊した(下詑参照)。 4)網羅的通史への試み 日本書紀から近世後期の「朝鮮・日本資料」までの交流資料を関連付け,その歴史的背景とともに網羅的な資料史を試みた。今回は素描程度であるが,今後,新たな資料発掘を進めるとともに,さらに分析を深めていき,将来の公刊に向けて作業を継続していく。
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