2009 Fiscal Year Annual Research Report
ルカイ語と関連諸語のフォーカス体系に関する実証的研究
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21520439
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
片桐 真澄 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (80294388)
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Keywords | 言語学 / 外国語 |
Research Abstract |
研究初年度の平成21年度は、ルカイ語およびその他の台湾原住民諸語、およびフィリピン諸語やインドネシア諸語など関連諸語に関する文献資料の収集と、その整理および分析に主眼をおいた。具体的な研究実績は、以下の通りである。 (1) ルカイ語および関係諸書語に開する文献資料の収集 ルカイ語に関する文献資料および記述資料、またルカイ語と類型的に関係が深いフィリピン諸語やインドネシア諸語に関する文献資料の収集を行った。その中で、インドネシア諸語に関しては、フィリピン・タイプのような豊富なヴォイス体系を示さないという点でルカイ語と類似している、バリ語に関する資料の収集を現地で行った。 (2) 現地調査によるルカイ語の統語・語用に関する口述・記述資料の収集 ルカイ語のヴォイス体系を中心に、統語的・語用論的観点から口述・記述資料の収集を現地調査にて行った。 (3) 得られた資料の整理および分析・考察と今後の課題 (1)および(2)によって得られた各資料について、整理および概括的な分析・考察を行った。その結果、たとえばバリ語などに見られる縮小化されたフォーカス体系が台湾原住民諸語のルカイ語と類似していることを確認した。その一方で、フィリピン・タイプのフォーカス体系を持つフィリピン諸語や台湾原住民諸語においても、能格性や能格型言語に特徴的な対象優位性(patient orientedness)には差異があると思われ、ルカイ語やバリ語を含めこれらの言語のヴォイスの体系を統一的に捉えることが可能であり、かつまたその多様性を説明する手がかりと思われる。今後は、この仮説に基づき、これらの言語についてより詳細な分析と調査を行う必要がある。
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