2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520461
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 晃次 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (90291450)
岸田 文隆 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 教授 (30251870)
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Keywords | 外国語 / 言語学 / 北朝鮮 / 文化語 / 朝鮮語 |
Research Abstract |
今年度の研究は「言語管理」と「技法」を中心におこなった。 「言語管理」とは文化語として定められた規範を維持するための技術である。この研究を義務教育用の教科書と青少年用の漫画の言語を材料に研究した。特に対象を方言に定め、文化語にどの方言のどのような語彙が採用され,維持されているかを解明した。その結果、半島全域の方言のうち中部方言(開城方言)までが採用の対象となり、名詞は漢字語を固有語に替えるための語彙、北朝鮮で一般化しつつある地方の事物の名称が置き換えの対象となり、用言では憎しみや相手の動作を卑しめて表現する語彙が方言から採用され、それで仮想敵国の人々の動作を描写していることがわかった。その表現や語彙を定着されるため教科書の表現に使用し、青少年用の漫画に至ってはさらに下卑た語彙表現を使っている実態が明らかになった。子供たちに繰り返し用いさせることで言語の定着を計っている。また、これは仮想敵国の人々に対して憎悪心を駆り立て、自国民に優越感を持たせる手段としても使われている。 「技法」は言語政策により実際に使用させる方法をいう。技法は文化語を使用させるというよりもむしろ労働党の政策の核心となる内容や価値観を短い言葉で表現し、党の機関紙その他の出版物の記事で繰り返し使用し、記憶させると同時に歌謡の歌詞に組み込み、音声媒体でも繰り返し聞かせる手段をとっていることを明らかにした。 特に歌詞の分析では歌詞が1番、2番と複数ある場合には、最終番の終わりから2番目の歌詞に集中的に現れることがわかった。これが実際どううたわれているかは、経済制裁でCDが輸入不可能で解明できていない。今年度の研究は北朝鮮の言語によるいわゆる「領導芸術」の手法と技術を具体的な事実に基づき解明する基礎を築くことに成功したと言えよう。
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