2011 Fiscal Year Annual Research Report
タマン諸語とカイケ語の記述、および他のヒマラヤ諸語との言語系統、接触に関する研究
Project/Area Number |
21520463
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Research Institution | Nagoya College |
Principal Investigator |
本田 伊早夫 名古屋短期大学, 英語コミュニケーション学科, 教授 (10269681)
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Keywords | 歴史言語学 / チベット=ビルマ諸語 / ヒマラヤ諸語 / 言語系統 / 言語接触 / タマン諸語 / カイケ語 |
Research Abstract |
本年度は、ネパールでのカイケ語の現地調査を2回実施した。調査では前年度の調査に引き続き、更なる語彙(特に動詞)の収集、それらの音調の特定、様々な文法事項の確認作業を行った。更にいくつかのテキストを録音収集し、その記述作業とそこに出てくる新出の文法パターンについての調査も行った。これらの調査結果とその分析により、未記述言語であったカイケ語の記述が確実に進展し、辞書、文法書等の刊行に向け、更に準備が整った。9月には神戸市外国語大学で開催された国際学会「The 17th Himalayan Languages Symposium」にて、これまでの研究成果として「A preliminary investigation into Kaike tones and a lexical comparison between Kaike,Tamangic,and Tibetan」を発表した。ここではカイケ語の音調構造はチベット語やタマン諸語のそれと類似点は多いものの、重要な相違点もあり、共通した音調発生過程を経たものでなく、それぞれが個別に発展させてきたものである可能性が高いことを明らかにすると共に、カイケ語の中でチベット語からの比較的新しい借用と思われる語彙の音韻・音調と現代チベット語中央方言におけるドナー語彙の音韻・音調には一定の対応関係が見いだされることを示した。このように、これまで系統的に比較的近いのではないかと漠然と考えられてきたタマン諸語やチベット語との系統、歴史的関係について更なる探究をしていく上で、相互の借用関係に基づく類似を抽出していく必要性とその方法を明らかにすることができた。
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