2009 Fiscal Year Annual Research Report
平安・鎌倉時代の真言・陀羅尼資料に見える連音変化現象の研究
Project/Area Number |
21520468
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥爪 周二 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (70255032)
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Keywords | 悉曇 / 連濁 / 連声 / 撥音 / 促音 |
Research Abstract |
1、儀軌資料に見られる、真言・陀羅尼加点資料の調査。本年度、調査することができた真言・陀羅尼等の悉曇関係資料のうち、特徴的な加点を持つものには、以下のようなものがあった。(1)東寺金剛蔵聖教〇第一八九箱四号『大日経疏』巻第四~十 七帖、〇第一八九箱五号『大日経疏』巻一~三、五~七 六帖。『大日経疏』巻第五には、梵語の韻文であるガーター(伽陀・偈)を漢字音訳したものが三種掲載されている。上記二書には、このガーターに仮名点および声調を表す声点が差されており、梵語の韻律との関係が注意される。特に、第五号の院政期の訓点(ヲコト点は宝幢院点)は、朱筆の加点が詳細である。今、試みに、高山寺蔵『大日経疏』永保六年点(ヲコト点は東大寺三論宗点)と、第一のガーター(韻文としては一行八音節、八行から成る)の声点を比較すると、高山寺本と第五号本との声点は食い違う部分が多く、概して、第五号本の方が、韻文らしい整った声調パターンを取る。具体的には、第一・三・七句が去声で始まる点、特に第三句と第七句は「去上上上平上上上」の型で一致している点などである。第二・第三のガーターを含めて、諸本の差声との比較は今後の課題である。(2)奈良国立博物館蔵『悉曇蔵』巻一~八 八帖。江戸時代の補写を含む取り合わせ本であるが、巻八の院政期写本は、明覚加点本の移点本と推定され、その加点内容も独特な部分が多い(詳細については発表準備中)。2、真言・陀羅尼の文字列と、対応する梵文との同定のための基礎的研究。継続中。上記の文献については、完了している。3、古代・中世の悉曇学書に見られる連声学説との比較。継続中。現時点では、理論と実践との乖離の方が目に立ち、通底する特徴については、なお検討中である。
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