2011 Fiscal Year Annual Research Report
平安・鎌倉時代の真言・陀羅尼資料に見える連音変化現象の研究
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21520468
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥爪 周二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (70255032)
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Keywords | 悉曇 / 連濁 / 連声 / 撥音 / 促音 |
Research Abstract |
〈平成23年度〉 儀軌類に見られる、真言・陀羅尼加点資料の調査の一環として、本年度は石山寺経蔵夏期調査の折に、『大毘盧遮那経広大儀軌』上下(校倉聖教第九函第六号一~二)・『阿〓薄具元帥大将上仏陀羅尼経修行儀軌』上下(一切経附一五七・校倉聖教第十九函第十一号)・『辮中辺論』上中下(一切経第四十二函第十一~十三号)、同経蔵冬期調査の折に、『金剛頂蓮華部心念誦儀軌』一巻(校倉聖教第十二函第七号)の撮影を行った。それぞれの資料について、後日、画像により摘要作業を行った(これらについては、原本による点検を次年度に計画している)。また、東京大学文学部国語研究室蔵の儀軌類の調査も、継続して行った。以上のような文献資料においては、漢字文字列・梵語原文から見て、イレギュラーな加点が多いものの、平安・鎌倉時代の悉曇学書に見られる連声学説との関係を、積極的に示す事例は、いまだ見いだせていない。 悉曇学書に見られる連声学説については、主にその起源について再検討中であり、特に三内説が日本起源であるという従来の説(馬渕和夫による)が適切かどうか、インド・中国の音韻学関連書の検討を継続している。 また、前年度までの調査により、東寺観智院蔵『麼多体文清濁記』(第二〇二函四号)が、『悉曇字記創学紗』の賢宝補筆部分の素材として、『創学紗』に先行して編まれたものである可能性が高いことを推定したが、今年度、全音注の網羅的検討を行ったことにより、この見通しをより確かなものとし、論文の形で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏の東寺観智院の調査は、先方の事情(東博などの空海展巡回のため)により中止になった。 夏・冬の石山寺経蔵調査は、調査団としての業務で繁忙であったため、個人の調査に割く時間がきわめて限定された。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な方針は、昨年度までと同様であり、儀軌類の原本調査を中心に、本研究は遂行される予定である。しかし、儀軌類から採集されるデータは、本研究にとって有意義なものである率が、当初予期したよりもきわめて低いため、精査よりも、調査文献の量を多くすることにより、より効率的にデータが採集できる資料を発見することに力を注がなければならないと思われる。悉曇学の連声学説については、新しい研究も出てきており、研究代表者の従来の見通しを、一部修正する必要があるが、本研究にとって、大きな方針転換を要するようなものではない。
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