2012 Fiscal Year Annual Research Report
平安・鎌倉時代の真言・陀羅尼資料に見える連音変化現象の研究
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21520468
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥爪 周二 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (70255032)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 悉曇学 / 連声 / 音便 |
Research Abstract |
(1)「儀軌資料等に見られる、真言・陀羅尼加点資料の調査(昨年度からの継続)」については、滋賀石山寺の調査を七月・十二月(それぞれ一週間程度)に、京都東寺金剛蔵の調査を八月(三日間)に行った。いずれも、国宝・重要文化財に指定されている貴重な典籍の拝観の機会を得てのものであり、調査団としての業務をこなしながらの作業であったが、調査ができたこと自体が有意義な資料であった。東京においては、東京大学国語研究室蔵、儀軌訓点資料の調査を、断続的に行った。また、以上の各所における調査結果のそれぞれについて、データの摘出・整理作業を行った。 (2)「真言・陀羅尼の文字列と、対応する梵文との同定のための基礎的研究(昨年度からの継続)」については、新たな資料の収集にとどまり、今年度分の新たな整理作業にまでは至らなかった。 (3)「真言・陀羅尼加点資料の整理・分析(昨年度からの継続)」については、(1)において採集したデータの整理を継続しているが、採集した実際のデータに、かなりパターンの偏りが生じてしまっているため、現時点での分類の枠組みが有効に機能しているとは言いがたい。分類・整理の枠組みの検討を継続中である。 (4)「悉曇学書に見られる連声学説との比較(昨年度からの継続)」については、研究実施計画の通り作業を進めているほか、盛典『倭語連声集』(享保十九年刊)の分析枠組みの再検討を行い、本研究計画の調査において得られたデータと対応させることが可能かどうかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査については、おおむね計画通り実施しているが、その調査において得られたデータは、出現するバリエーションに大きな偏りがあり、労力に比して、興味深いデータが採集できる効率が悪いのが現実である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「儀軌資料等に見られる、真言・陀羅尼加点資料の調査(昨年度からの継続)」①京都東寺金剛蔵・滋賀石山寺をはじめとする近畿地方の社寺における調査。今年度中に三回、三泊四日~五泊六日程度行うことを計画する。このために国内旅費を計画する。 ②国立国会図書館等、国内の諸文庫・図書館における調査を、月一回程度計画する。③東京大学所蔵文献の調査は随時実行する。④影印本・紙焼・画像データ・活字翻刻資料による調査を随時実行する。 (2)「真言・陀羅尼の文字列と、対応する梵文との同定のための基礎的研究(昨年度からの継続)」① 『陀羅尼事典』等、先行諸書に掲載される真言・陀羅尼を、検索しやすい形に整理。② ①の成果を、梵語の側から整理。 (3)「真言・陀羅尼加点資料の整理・分析(昨年度からの継続)」(1)(2)の成果を統合し、整理・分析するための枠組みの練り上げる。真言・陀羅尼の連音変化に固有のものに関しては、和語・漢語の場合と異なり、研究の蓄積がほとんど存在しないので、研究代表者が独自の立場から捉えてゆくことになる。 (4)「悉曇学書に見られる連声学説との比較(昨年度からの継続)」古代・中世の主要悉曇学書(翻刻・影印のあるもの)における連声学説を検索しやすい形に整理。 一昨年、中国で刊行された、中国悉曇学の研究書の精読・分析。 (3)(4)の成果を統合し、比較・分析を行う。
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