2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520479
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
北原 博雄 聖徳大学, 人文学部, 准教授 (00337776)
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Keywords | アスペクト / 限界性(telicity) / スケール(scale) / 程度修飾 / 前置詞句/後置詞句 / 意味論 / 統語論 |
Research Abstract |
平成22年度は、「まで」句一般と、着点を表す「に」句とのスケール構造を明らかにすることを目的とした。スケール構造を考えるのは、それが、動詞句・名詞句・形容詞句の限定性(boundedness)を範疇横断的に説明するメカニズムだからである。 スケールを論ずる際には程度修飾関係を考えることが有用であるが、本年度は程度修飾関係について二点考える必要に迫られた。まず、報告者のこれまでの研究を含めた先行研究では、動詞の語根(root)のスケール構造が動詞句の限界性(telicity)をかなりの程度説明することが明らかになっている。しかし、例えば語根が開放スケール(open-scale)構造を持つ「上がる」は、状態変化を意味する場合は「業績が非常に上がる」のように「非常に」から修飾されるが、位置変化を意味する場合は「太郎が坂道を非常に上がる」のように不自然になる。次に二点目は、かなり理論的な問題だが、程度副詞の修飾対象をどう規定するかという問題である。語根が状態的な意味を持ち、かつ、段階的(gradable)であれば、程度副詞の修飾対象は統語論でも語彙分解理論でも容易に表示できる。しかし、「かなり本を読んだ」のように非限界(atelic)な動詞句を修飾して量程度を限定する場合は、程度副詞が語根の持つ概念を修飾するとは言いがたい。これについての説明を、語用論レベルを含めて考えた。 平成22年度は、研究の成果を発表できなかったが、以上述べた程度修飾に関する二点と、「まで」句のスケール構造についての研究をまとめたものを、平成23年度は逐次刊行してゆく予定である。
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