2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520484
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
天野 みどり Wako University, 表現学部, 教授 (10201899)
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Keywords | 他動構文 / 格助詞ヲ / 対格 / 接続助詞的ヲ / 周辺的 / 構文 / 類推 / プロトタイプ |
Research Abstract |
現代日本語の構文的意味を明らかにする研究の一環として、現代日本語のヴォイス、とりわけ他動構文が表す意味と機能を明らかにしようと実例を収集し考察を進めた。助詞ヲを伴う文をひとまず他動構文と呼ぶことにし、AガBヲVという形を持つ文にどれだけの用法の広がりがあるのか、それらに共通する意味が見いだせるのかを考察した。これまでに作成してきた約60種類の話しことばの録音資料とその文字化資料を整備し、実例収集に着手した。それに並行して書きことば資料から他動構文を収集し、助詞ヲを伴う文の多様性と、多様性に通底する助詞ヲの本質的意味を考察した。その結果、特に周辺的用法と位置づけられてきた(1)状況を表すヲ、(2)「何を文句を言っているの」の第1のヲ、(3)接続助詞的なヲの文の3種類の文類型について、こうしたAガBヲVにも通常の他動構文に見られるヲと同様の意図的動作の対象を表す意味が生きていることを明らかにした。また、これらの文の意味を理解するために、通常のAガBヲV文の持つ類型的意味をベースとした類推が行われていると考えられることを明らかにした。例えば(3)「普通なら帰るのを遊んでいた」のような接続助詞的なヲの文は、「帰る」ことが期待される方向を遮って異なる動作を起こした意味があり、「やろうとするのを遮った」などの遮る系の他動詞の文が形成する他動構文の下位類型をベースとしている。遮る系の他動詞が「~のを」に後接する頻度が十分であることを調査から明らかにし、慣習化されたこの類型が、創造的な他動構文の形成に役割を果たしているとした。さらに話しことば資料の分析を進め、柔軟な他動構文の運用の実態を明らかにし、日本語の他動構文をより緻密に記述すること、言語の生成・理解にとって構文の果たす役割がいかに重要であるかをさらに詳しく論じることが課題である。
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Research Products
(3 results)