2010 Fiscal Year Annual Research Report
仮名成立史から見る万葉集仮名書歌巻の孤立性と平仮名への連続性の研究
Project/Area Number |
21520487
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
乾 善彦 関西大学, 文学部, 教授 (30193569)
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Keywords | 仮名 / 平仮名 / 万葉集 / 三宝絵 / 表記体の変換 / 朝鮮半島の木簡 |
Research Abstract |
本研究の目的は、万葉集の仮名書歌巻の仮名使用を、さまざまの文献と比較し、それを仮名成立史の中に正当に位置づけることで、平仮名成立の過程にも重層性のあることを指摘し、仮名成立のシステムを明らかにするものであるが、本年度は、とくに奈良時代の仮名の使用について、訓字主体表記の資料との関連性について、「古代語における文字とことばの一断章」と「正倉院文書請暇解の訓読語と字音語」との論考において、仮名の持つ表音的な意義が、訓字主体の漢語使用との関係で、日本語を書きあらわすための文字の成立に大きくかかわっていることを改めて確認した。つまり、古代の変体漢文による漢語使用のあり方からは、古代語の語形は確定しえず、仮名表記こそが、日本語散文成立への必須条件であったことを明らかにした。 さらに、昨年度に引き続いて三宝絵の三伝本をとりあげ、平安時代の平仮名は、片仮名との関係において、文体差をもたらしており、今後、表記体の変換の観点から、仮名の意義を考えて、万葉集との連続性を考えるべきことを明らかにした。(「『三宝絵』の三伝本と和漢混淆文」『言語変化の分析と理論』(2011.3) また、朝鮮半島出土の木簡の解読から、朝鮮半島において仮名が定着しなかった背景を、朝鮮語の性格に求めるべきことを考えた。(口頭発表「日本における新出資料の増加と既存資料の見直し-新出資料から見えてくるもの-」)
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Research Products
(4 results)