2009 Fiscal Year Annual Research Report
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21520497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅川 照夫 Tohoku University, 高等教育開発推進センター, 教授 (50101522)
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Keywords | preposition / out / 経路 / 前置詞 |
Research Abstract |
経路前置詞のうち、特に前置詞句[out NP]について研究を進めた。この句の厄介な問題は、NPが「出入り口、開口部」の名詞に制限されるという極めて特殊な制限を持つ点にある。この事実は従前から知られていたが、十分に説明する提案は為されたことがなかった。本研究では、前置詞outが、仮にも英語の前置詞として機能するからには、当然、英語の前置詞の持つ統語的かつ意味的制限を遵守しなければならないと考え、outの意味に最も近い前置詞クラスが何であるかを検討することから始めた。outが経路を表す前置詞であることから、経路の前置詞全般(up, down, across, around, through)の意味を考察し、中でもup,downの意味と用法を詳細に検討した。up, downは目的語の形状に2次元縦長平面もしくは3次元筒状円筒形という厳しい選択制限を課しており、それに応じて、移動するものの移動経路の様態にも違いがあることが分かった。この結果を前置詞outに適用すると、2次元縦長平面(outの場合は矩形平面)の制限からは「出入り口、開口部」以外の名詞も目的語に生じることが予測され、事実観察とも合致していることが示された。すなわち、roadやstreet、stairs等の生起である。3次元筒状円筒形の選択制限からは、まさに「出入り口、開口部」の制限が自動的に導かれ、生起する名詞句もdoor, windowに限らないことが示された。tunnelやchimney等である。コーパス調査でout the door, out the windowが圧倒的に多く観察されるのは、我々の日常生活の中で、くぐり抜ける対象としてドアや窓が際立って高い頻度で登場するからである。 言語は機能上、保守的な面を備えている。どんなに新奇な現象であっても、純然たる例外や言い誤りでない限り、その言語の文法に則っているものであるから、具体的事実観察を通して背後に隠れている規則性に到ることができるはずである。この意味で、前置詞句[out NP]の研究は、単純な事実であるが、我々に非常に興味あるテーマを与えてくれた。
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