2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520497
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅川 照夫 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (50101522)
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Keywords | preposition / out / 認知意味論 / 意味論 / 前置詞 / 経路 |
Research Abstract |
前置詞句out NPが他の前置詞句形式(up/down NP)を基盤にして英文法に確立されてきたという前年度の主張は、言語習得の時間軸を説明原理の中に取り入れた動的文法理論が提唱する「モデル依存の拡張」として理論的に捉えなおすことができる。今年度においては、動的文法理論の思考法に基づいて、[out NP]構造の目的語がなぜ出入り口を表す名詞句に限定されるのかを、漸次的拡張という考え方で説明し、かつその考え方が他の経路前置詞across/around/throughの意味属性を考える際の重要な手がかりとなることを模索した。漸次的拡張において重要な働きをするのが、基本構造から導かれ、かつ問題の特殊な構造へと繋がる中間構造の存在である。すなわち、[out NP]において、中間構造としての副詞的対格[out NP]用法(out Indiana way, out West)が両者の構造を繋ぐ上で、非常に重要な役割を荷っていることが分かった。漸次的拡張によれば、意味が中心となって拡張が促され、構造はその必然的な帰結にすぎないことも分かった。前置詞outは目的語に極めて特殊な制限を要求するけれども、既に副詞的out用法のみの段階でこの制約の中心的部分が含意されており、またoutの意味が経路前置詞の意味に酷似しているという条件も働いて、経路前置詞としてのoutが自然な形で誕生したと言える。漸次的拡張によれば、たとえば経路前置詞throughにおいて、物体内部を通過する意味(through the glass)から物体内部空間を経て通過する意味(through the net)を経て、物体間を縫って通過する意味(through the legs)へと変化する自然なプロセスを説明することができる。
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Research Products
(1 results)