2011 Fiscal Year Annual Research Report
日英語の名詞節化形式の意味と談話機能の派生メカニズムに関する理論的・実証的研究
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21520502
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大竹 芳夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60272126)
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Keywords | 言語学 / 英語学 / 日英語比較研究 / 名詞節化形式 / 「の(だ)」 / 指示表現 / 談話機能 / 補文 |
Research Abstract |
本研究は、日英語の名詞節化形式と意味・機能がどのようなメカニズムで取り結ばれているのかを原理的に解明することを目的とする。研究最終年度の本年度は、平成21-22年度に得られた成果を検証すると同時に、比況構文It is like節構文とその否定形It is not like節構文の諸特性を明らかにした。第一に、両構文はいずれも先行する言語的文脈を受けて発話されること、主題itには先行する命題内容が話し手の知識にすでに取り込まれた既獲得情報であることを積極的に合図する働きがあることを確認した。It is like節構文の基本的意味は、「<先行することがら>は~といった{感じ/印象}なのだ」というような、先行することがらから話し手が直感的に受ける感じや印象を表現することである。必然的に、like節内に提示される内容は話し手の知識や経験に頼らなければ聞き手には容易には導き出せないような喩えやなぞらえとなる。そのため、話し手はlike節内の説明が単なる思いつきやその場限りの喩えであるかの印象をできる限り排除しようとしばしば試みる。しかしその一方で、like節内に提示する喩えやなぞらえが独断的、独りよがりの言として聞き手に受け止められてしまうことを回避するために、それ以外の表現でも比況の余地があるという含みを残したり、控えめに比況表現を伝達するように話し手が努める場合もある。本研究では実例を観察しながら、両構文の意味論的・語用論的特性を解明した。第二に、本研究補助金および平成21年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費(学術図書)課題番号215060)の研究成果として刊行された『「の(だ)」に対応する英語の構文』(東京:くろしお出版)が国内外の論考で言及され一定の評価が得られていることを確認し、本研究成果の学術的位置づけと今後の発展可能性を検証した(Horie Kaoru (2011) ("The Interactional Origin of Nominal Predicate Structure in Japanese." Journal of Pragmatics)、Kato Masahiro (2011) ("Review : Otake, Y.(2009) "No (da)" ni Taiosuru Eigo no Kobun (The Japanese No (da-Construction and the Corresponding English Constructions." English Linguistics.(日本英語学会学会誌)Vol.28-2.)、牧野成一(プリンストン大学)(The 18th Princeton Japanese Pedagogy Forum, May 7-8, 2011特別講演「翻訳で何が失われるか」)等)。なお、平成24-26年度科学研究費補助金(基盤研究(C))課題番号24520534「日英語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没の普遍性と個別性に関する総合的研究」の新規交付が内定しており、本研究で見出された基本的知見と着想を、次年度以降の研究でさらに深化、発展させながら、成果を国内外に積極的に発信する予定である。
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Research Products
(2 results)