2010 Fiscal Year Annual Research Report
談話における分裂文の総合的研究-関連性理論、機能文法、認知言語学による考察
Project/Area Number |
21520503
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
加藤 雅啓 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 教授 (00136623)
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Keywords | 指定文 / 分裂文 / 疑似分裂文 / 認知効果 / 処理労力 / 「の(だ)」構文 / it is that-construction / already-learned information |
Research Abstract |
本年度は、疑似分裂文を取り上げ、[1]文献による理論研究、[2]言語資料の収集、[3]データベース作成の三つの方法によって研究を進めた。 疑似分裂文に関する関連性理論、認知言語学、及び機能文法のそれぞれの枠組みにおける先行研究を総括した。関連性理論の観点からは、疑似分裂文が談話内で果たす談話機能と関連性理論との関わりを検討した。とくに、談話における疑似分裂文と先行文脈との意味的つながり、認知効果、及び処理労力との関連性を明らかにした。さらに想定から導かれる論理形式と語用論的推論との関係を詳細に分析し、疑似分裂文に関する推論メカニズムを考察した。また、中島(1995)の主語からの外置の分析に従い、「疑似分裂文は処理するのに労力がかかり、これに見合う効果を果たさねばならない」という分析と「疑似分裂文の適格性は統語論的制約と語用論的条件に基づいて決定される」という主張を検討し、疑似分裂文に関する統語論と語用論の棲み分けという観点の可能性を検討した。機能文法の観点からは、疑似分裂文のような有標構文がもたらす談話機能のうち、Ziv(1975)の「関係節命題の前景化」説とGueron(1980)の「提示文」説、高見(1995)の「情報の重要度」説等を取り上げて、詳細に検討し、これらの分析の妥当性を検証した。さらに,大竹(2009)の日本語の「の(だ)」に対応する英語の構文に関する論考を取り上げ、その妥当性を詳細に検討した。 これらの分析結果を総合的に検討し、疑似分裂文の談話機能の特性とその存在意義を明らかにし、談話における疑似分裂文の認知プロセスと推論メカニズム、及び日本語の「の(だ)」に対応する英語の構文の機能について考察した。これらの研究成果については、日本英語学会、及び日本プラグマティックス学会に投稿(いずれも査読付き)し、現在審査中である。
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Research Products
(1 results)