2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際共通言語としての英語のコア・アイデンティティと社会的役割
Project/Area Number |
21520514
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
生田 祐子 文教大学, 国際学部, 教授 (50275848)
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Keywords | 英語 / 国際共通言語 / リンガフランカ / 社会的役割 |
Research Abstract |
コソボ共和国の対象者に対して、次の4項目についてほぼ研究計画どおり調査を完了した。1)紛争前、紛争後の民族間の対立感情。2)和解に関する理解の相違。3)公用語としての共通言語の認識。4)母語と外国語教育のあり方(英語の役割)。地域の政治的な要因により、セルビア系コソボ人(セルビア語話者)のデータが予定より少ないが、主としてミトロビツア南部とプリスティナの大学関係者と学生、NG0主催の多民族融和プロジェクトに参加している学生、コーディネーターたちから有益なデータを得ることができた。調査方法は、事前アンケートとインタビュー(semi-structured形式)の形で実施、音声は文字化を行い、コーディングによる分析結果をもとに考察した。非母語話者間の英語のアイデンティティは、複数のアイデンティティを共有するハイブリッド(Hybrid)アイデンティティであると推察し、英語の役割は、国際社会へアクセスする手段、情報収集と発信するための自らの言語である意識が高いことが判明した。特に、民族が分断されているミトロビツア地域等において、アルバニア人とセルビア人の紛争後に教育を受けている人たちは、コミュニケーションの手段として英語使用を選択する場合があるが、他の世代は、コミュニケーション手段の妥協策として英語を選択することもある。すなわち、相手の言語が理解できても民族間の力関係のバランスをとるために、中立言語の英語使用を望むこともある。しかしオラホバッツ地域出身者のデータからは、2つの言語が混じり合った方言が存在する地域もあり、両者間のコミュニケーションには特に英語を使用する必要がない場合も判明した。今後の民族宥和のためには互いの言語を学び、積極的に使用する状況が望ましいと調査結果の一部が示唆しているように、リンガフランカとしての英語使用が、必ずしも平和構築には役立つとは考えられない。
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Research Products
(2 results)