2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本語発話解釈の難しさに関する研究-言いさし発話に注目して-
Project/Area Number |
21520547
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
荻原 稚佳子 明海大学, 外国語学部, 講師 (10458482)
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Keywords | 言いさし / 日本語教育 / 談話研究 / 異文化コミュニケーション / 発話解釈 / 省略 |
Research Abstract |
昨年度の日本語母語話者(以下JNS)の言いさし使用の調査に引き続き、今年度は、中国語母語話者(以下CNS)、韓国語母語話者(以下KNS)および英語母語話者(以下ENS)の言いさし使用の分析、比較考察を行った。1対1の自由会話で、各ターン末に出現した言いさしについて、使用の頻度、言いさしの形態、言いさし表現、属性別使用傾向について、各母語話者の自由会話のデータをもとに調査した。 その結果、言いさし使用の頻度については、母語話者別の差異はあまりなくターンの約40~50%は言いさしで終わっていることが分かり、言いさし使用はJNS特有のものとは言えないことが明らかになった。 言いさしの形態については、非母語話者(以下NNS)の特性から質問による言いさしが多用されていたが、倒置、付加などの語順を変える必要がある形態については、各母語話者とも使用が少ないことが分かった。ただ、日本語と同じ膠着語であるKNSについては、その差異は小さかった。このことから、たとえ倒置により語順が母語と同じになるとしても、統語関係が語順により決定される母語を持つCNSとENSにとっては、語順を入れ替えるということが難しく、使用も理解も難しいものであることがわかった。 言いさし表現については、母語別に特徴があり、ENSはJNSと助詞終わりの使い方が酷似しており、「けど・が」が和らげのストラテジーとして多用されている点が特徴的であった。CNSの名詞止めによる言いさし使用は、使用も理解も容易なもので、かなりの部分が語彙確認とその対応である点が特徴的であった。KNSは、助詞終わりの中でも、「から」による言いさしが特徴的で、自然な日本語を演出する終わり方のストラテジーとして使用されていると考えられる。 言いさし使用の実態が初めてわかったことで、NNSの使用と理解の難しい点が明らかになったことは意義深く、今後日本語教育や異文化コミュニケーション理解に役立てることができると考える。
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Research Products
(2 results)