2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語多読授業の短期的、長期的効果に関する実証的研究
Project/Area Number |
21520586
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
稲垣 スーチン Osaka Prefecture University, 総合教育研究機構, 准教授 (50405354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 俊史 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (00316019)
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Keywords | 教授法 / 多読 / カリキュラム |
Research Abstract |
豊富で多様な理解可能なインプットは第二言語習得の成功に不可欠である。しかしながら、日本のような外国語として英語を学ぶ環境において十分なインプットを確保するのはたやすいことではない。近年、学習環境に関わらずたくさんの英語に触れることを可能にする多読(extensive reading)が注目を集めている。稲垣・稲垣(2008)では、大学における1学期間の教室外での英語多読を取り入れた授業により、英語習熟度テストであるミシガンテストの総得点が有意に伸びたことを示した。しかし、稲垣・稲垣(2008)の研究報告では、多読をしないグループが存在しなかったため、観察された効果が教室内の授業活動によるものであった可能性があり、それが多読によるものであったと断定することができないという問題があった。本研究では、大学における多読を取り入れたグループ(実験群)の効果を、多読を行わないグループ(対照群)と比較することにより厳密に検証した。その結果、実験群と対照群のプレテストの得点を比較するためt検定を行ったが、両群の英語習熟度は同等であった。また、グループ(多読ありvs.多読なし)とテスト(プレテストvs.ポストテスト) を独立変数として、繰り返しのある2要因の分散分析を行った結果、グループの主効果は有意ではなかったが(F(1,122)=0.70, n.s.)、テストの主効果は有意であり(F(1,122)=43.58, p<.001)、グループとテストの有意な交互作用も得られた(F(1,122)=5.00,p<.05).この結果は、多読の有無に関わらず、両グループとも1学期間め英語の授業により習熟度が伸び、その伸びは多読を行っだグルーブの方が大きかったことを示している。さらに、多読を導入したグループは、多読を行わなかったグループよりテストスコアの伸びが大きかった。このことから、両グループとも1学期間の英語授業で英語力が伸びたが、実験グループは、多読を行ったこにより対照群よりも大きく伸びたと言える。稲垣・稲垣(2008)では、同様の研究で対照群を設けなかったため、観察された習熟度の伸びが多読の効果であると断定できなかった。しかし、本研究では、通常の授業活動の効果とは別に多読の効果を特定できたため、多読の効果のより確かな証拠が得られたと言える。今後の研究課題として、読んだ量(語数)と得点の伸びの相関を見る必要がある。
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