2011 Fiscal Year Annual Research Report
英語多読授業の短期的、長期的効果に関する実証的研究
Project/Area Number |
21520586
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
稲垣 スーチン 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50405354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 俊史 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (00316019)
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Keywords | 教授法 / 多読 / カリキュラム |
Research Abstract |
言語習得におけるインプットの重要性は疑問の余地がない。ところが、日本のような外国語圏で英語を習得しようとすると、インプットの不足が大きな障害となる。そこで、外国語圏にいながら楽しんで大量の英語に触れることができる多読(extensive reading)が注目されている。我々はこれまでの研究で、大学における一学期間の多読を取り入れた授業により、英語習熟度テスト(ミシガンテスト)の総得点に有意な伸びが見られ(稲垣・稲垣2008)、セクション別に見るとその効果は読解のみならず、聴解や文法にも及ぶことを示した(稲垣・稲垣2009)。また、さらにもう一学期間多読を続けたクラスは、一学期目に見られた習熟度の伸びを維持していた(稲垣・稲垣2011)。最後に、稲垣・稲垣(2010)では、別の習熟度テスト(Oxford Quick Placement Test)を用い、多読を行ったクラスは行わなかったクラスより習熟度の伸びが大きいことを示した。これらの研究で、多読が英語力全般の向上をもたらすことが実証されたと言えるが、読むスピードの増加や語感の発達など、習熟度テストでは捉えきれない側面に関する効果も検証することが課題として残った(稲垣・稲垣2011)。 そこで、本研究では、多読を導入している大学二年生の英語二クラスを対象に、一学期の授業期間中に月に一度の割合で四度TRR(Timed Repeated Readings、授業に読みの流暢さを促す活動)を実施した。その結果、緩やかではあるが読む速度が増し、学期の終わりには学期の始めに比べて読む速度が有意に増加していた。したがって、一学期間の多読により読みの流暢さが向上したと言える。我々の先行研究(稲垣・稲垣2008,2009,2010,2011)では、習熟度テストの成績に基づき多読が英語習熟度全般を向上させることを示したが、今回、別の指標を用いて習熟度テストでは捉えきれなかった読みの流暢さに対する多読の効果を示したことは意義深いと言えよう。
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