2010 Fiscal Year Annual Research Report
福祉のためのタスク中心教授が第2言語習得過程に及ぼす影響-縦断的事例研究-
Project/Area Number |
21520604
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
戸出 朋子 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (00410259)
|
Keywords | タスク中心教授 / ダイナミック系理論 / 縦断的事例研究 / 用法依存言語習得理論 |
Research Abstract |
「福祉をテーマとする「タスク中心教授」を昨年度に開発した。それを筆者の勤務する大学の英語の講義で実施し、学生の書く英語の複雑性の発達を「ダイナミック系理論」の枠組みで縦断的に分析した。 各回の授業の最後15分を使って、「プロのQOLサポーター」というテーマで英文エッセイを書かせた。そのうち自由意志で研究協力を申し出た7名の学生のデータを分析した。各回のエッセイ中の英文の「意味の複雑度」と「形式の複雑度」をそれぞれ一定の公式に従って算出し、その変容の軌跡を時系列で分析した。 その結果、形式の複雑度発達の過程には、安定期と変動期があり、変動期は次の段階へのけん引役を果たす、という示唆を示す軌跡が、どの学生にも表れた。また、時間を追うごとに、伝えたい意味の複雑度と形式の複雑度とのギャップの縮小が、多くの場合見られた。しかし、形式の複雑度が発達するにつれて、表現したい意味がより複雑になる場合もあり、意味と形の複雑度の関係は一様でなかった。 本研究は、第2言語は線状に発達するのでなく、変化が見えにくい時期と変化の激しい時期があるということを実証した点で、外国語教育の重要な示唆となる。さらに、従来のタスク中心教授に関する研究はグループの平均値を比較して効果を測る実験を採用したものが主流を占めているが、本研究は、個人の発達の軌跡を時系列で分析したという点で、世界でも数が限られており、貴重である。
|