Research Abstract |
13大学からの3587名を英語熟達度により3分割(上位層816名,中位層1942名,下位層829名)し,その層間の英語学習意識の差を,先行研究からの7尺度(「認知方略使用」,「自己効力感」,「自己調整学習」,「学習者自律」,「言語学習ビリーフ」,「試験不安」,「内的価値観」)で調査した。因子分析の結果,7尺度のうち5因子の内的信頼性は高く,因子として抽出できたが,2尺度(「自己調整学習」,「言語学習ビリーフ」)は,内的信頼性が高くなく因子として抽出できなかった。そして,「認知方略使用」,「自己効力感」が,どの層においても第1または第2因子であったので,その2因子の関係から,学習者意識の差を分析した。上位層では「認知方略使用」が第1因子でそれ以上分解はできなかったが,中位層では「認知方略使用」が第1因子だが,2因子に分解でき,下位では,「認知方略使用」が第2因子になり,さらに,2因子にわかれ,またその因子が2つの項目群に分けることができた。この結果は認知能力を制御するメタ認知能力の度合いに起因すると推察できる。つまり,上位の英語学習意識は先行研究からの尺度をコアとして強くまとまっているが,中・下位層では,コアの尺度に別な尺度からの項目がつき,まとまりの度合いが緩くなり,因子の特徴にも幅が出て,さらなる因子分析が可能になり,そのまとまりの緩さが英語学習意識を弱くしていると推察できる。また,「自己効力感」の分析から,授業が中・下位層のメタ認知能力を発達させるものになっていない示唆が得られた。多くの学校で,英語習熟度を測定し,そのレベルに合わせた授業を行っている。それは,学習者の実力にあった授業をしようとする教員の配慮であるが,本調査結果を見ると,中・下位層にとって,そのことは英語学習意識を教室内に閉じ込め,しかも課題には対処できるという変則的な自己効力感を生んでいることを表している。
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