Research Abstract |
平成21年度に 13大学からの3587 名を英語熟達度により3分割し,その層間の英語学習意識の差を調査した。全ての層の学力と相関を持つ因子は「認知方略使用」 だけであった。平成21年度は,上位層の学習者が,英語の学習に対する時に,「認知方略使用」で対処するのに対して,下位層の学習者は,「認知方略使用」ではなく,「自己効力感」で対処する傾向があることを明らかにした。このことは,下位層が十分に「認知方略使用」を発達させていないことが原因だと思われる。本年度は,どのような意識が「認知方略使用」に影響を与えているかを探るために,「認知方略使用」と相関が高い因子「授業への要望」と「内的価値観」について検討することにした。その結果,「授業への要望」においては,成績上位者ほど,授業において評価を意識するのでは無く,授業を充実させることに関係する題材や活動,学習目標,学習活動形態に関心があることが判明した。逆に,下位層は,授業に関する意識は試験などの外発的動機に影響され,特に評価を意識したものであることが判明した。そして,「内的価値観」についてだが,これも上位者ほど多くの内的価値観を密接に認知方略使用に関係させ,学習の成果を新しい課題に利用し成績をあげているのに対し,下位層においては,内的価値観を構成する要素も少なくなり,認知方略使用との結び付きもさらに弱いので,学習の成果を新しい課題に利用し成績をあげることができないことが判明した。3つの層を比較してみると,成績が高い学習者は認知方略感を持って学習するが,低い学習者は認知方略使用よりも義務感により英語の課題に当たる傾向が強くなる。しかし,日本の大学生のすべての層の認知方略使用に,英語でコミュニケーションをしたいという希望が影響力を与えていることも判明した。
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