2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520656
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
胡 潔 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (30313399)
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Keywords | 資蔭制 / 官人制度 / 家業 / 嫡庶制 |
Research Abstract |
今年度は、21年度に行った日唐律令条文の比較、22年度で行った所有形態と居住形態の相互関連性に関する研究に続き、今年は主に律令の中核とも言うべき官人制度と家族・親族制とのかかわりについて調べた。二段階に分けて、日本と中国の両国の史料から、主に、(1)資蔭(蔭位)の適用範囲と機能、(2)家業の継承のあり方、(3)父系親族の結集のあり方、(4)嫡庶制の四点に絞って調査を行った。 第一段階では中国の官人制と資蔭制、家業継承、門第と任官などとの諸問題を調査した。古代日本の世襲的官人制に比して、中国の官制上の人材主義がしばしば指摘されてきたが、後漢以降次第に形成され、魏晋時代に至って顕著になった大族・世族の存在、さらにそのような大族・世族による官職の独占は見過ごせない。親族構造の側面から見れば、大族・世族は父系親の同居・集住による結果である。調査を通じて、一族による政治地位の獲得または拡大の過程において資蔭制が大きく機能したとは言い難く、嫡庶制もほとんど機能しない、ということが判明した。 第二段階では、古代日本の蔭位(資蔭)制と嫡子制について調査した。蔭位制は古代日本の官位制において中核をなすのみならず、制度的家を創設する上では重要な意味を持つ。蔭位制の最も重要な機能は父子間の継承ラインを形成せしめることで、さらに嫡庶制との結合によって父-嫡子という父系直系的、一子継承的「家」の確立を促すことである。蔭位制は「継嗣」という概念を媒介に、「家の継嗣」とされた点は特徴的である。さらに嫡庶制によって一子継承的志向が強く、中世の惣領制に繋がるが、院政期以降にみられる、「職」=「家業」をめぐる兄弟間、実子養子間の紛争の遠因にもなったことを調査で明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的に計画通りの三段階に分けて進めてきたため、(2)に該当する。
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Strategy for Future Research Activity |
婚姻居住と所有形態および家族・親族の相互扶助という生活の側面と、蔭位制を中心に展開された父子間の継承という政治の側面の両方から古代日本の親族、家族の特質を記述する予定である。
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