2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520662
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安達 宏昭 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (40361050)
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Keywords | 近現代史 / 東アジア / 東南アジア / アジア太平洋戦争 / 大東亜共栄圏 / ブロック経済 / 経済構想 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、戦時期の広域経済圏構想すなわち「大東亜共栄圏」の経済的側面に関する構想について、各機関が立案したものを収集することに努めた。主に、企画院、大学研究機関、海外経済団体などの資料を収集し、これまでの収集資料とあわせて、それらの情報をデータとしてまとめた。 第二に、収集した資料や図書のうち、農業部門での産業配置計画について分析を行った。東・東南アジア地域の農業配置については、開戦時の生産を適地適業の観点から重視し、圏内での分業を維持していこうという議論と、より狭い地域における自給自足態勢の確立を主張する議論が対立していることがわかった。圏内分業を重視する議論では、東南アジアのゴムや砂糖などの商品作物を維持することを目的にしていたことに対して、狭い地域の自給自足を目指す議論においては、船舶による輸送の不安定さを指摘していた。また、棉花や羊毛、小麦の不足から、その増産対策を検討する議論とともに、広域経済圏にはインドやオーストラリアを編入すべきであるとの主張が多かった。 第三に、工業部門における産業配置計画について分析を行った。この部門における議論においては、日本本土を高度な生産技術を必要とする工業の中心にするという考えは共通していたが、大規模な生産施設を必要とする素材部門の工業については、中国や朝鮮半島に育成すべきであるとの議論も多く、なかには化学工業などは、中国華北地方や「満洲」南部や朝鮮半島に重点を置いて開発すべきであるという議論も見られた。その背景には電力供給や原料資源に近接しているとの観点があり、この点を配慮して分散型の工業配置を主張し、日本本土中心の垂直的統合に対抗する「多元的自給圏」の構想が存在したことを見出せた。
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