2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520662
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安達 宏昭 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (40361050)
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Keywords | 近現代史 / 東アジア / 東南アジア / アジア太平洋戦争 / 大東亜共栄圏 / ブロック経済 / 経済構想 |
Research Abstract |
本年度も、昨年度に引き続き、戦時期の広域経済圏構想すなわち「大東亜共栄圏」の経済的側面に関する構想について、各機関が立案したものを収集することに努めた。そして、その主要な構想を打ち出した機関の議論について政策的な分析を行った。 工業部門における産業配置で、主要な部門も大陸(中国華北地方、東北地方、朝鮮半島)にまで分散配置を主張した企画院は、当時、様々な産業の適正な配置を考慮した国土計画案を政策的な背景としており、工業の本土集中が日本国内の農業問題とそれに結びつく食糧問題、人口問題を引き起こしていた点を考慮して、「多元的自給圏」ともよべる構想を立案したことを明らかにした。 一方、日本本土に工業を集中するとの考えをもっていた商工省は、「大東亜共栄圏」における日本の指導力把握のために重要産業の保持を強調しており、実際に産業再編を行う立場にある商工省と本土産業界の主導性の維持が目的であったことを明らかにした。商工省でも国土計画が検討されていたが、主眼は生産力の拡充であり、そのため産業再配置や再編成を「運営」する権限をより重視した構想であったのである。 さらに、民間で大規模な研究団体であった国策研究会の経済構想も、「指導国」である日本の統制権限を強力にすることを主張し、その運営機関の充実を求めていた。国策研究会がこのような案を打ち出したのは、「共栄圏」が一つの経済圏として強く一体性を保持するためであり、経済圏として他の経済圏と交流する場合に、窓口を一本化して、経済圏の有機的統一性を確保しつつ建設を行おうと考えていたからであった。 以上のような分析から、これらのような「経済建設」をめぐって異なる構想が生まれてきたのは、政策主体が優先させる課題認識のズレから発生したものであることがわかった。
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