2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520679
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
春田 直紀 熊本大学, 教育学部, 准教授 (80295112)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 環境認識語彙 / 南北朝遺文九州編 / 阿蘇カルデラ / 重要文化的景観 / クリーク農村 / 自然災害 / 生業戦略 / 動植物観 |
Research Abstract |
環境認識語彙のマクロ分析については、『南北朝遺文』九州編を対象とした小地名のデータベースを構築し、主要語彙の語義と構成の分析を通して、南北朝期の九州における環境認識の型を抽出した。現地調査は、熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字長野において、環境認識語彙のミクロ分析に関わる調査を実施した。調査内容は、小字名に関する土地情報と通称地名の収集、林野・耕地の利用変遷についての住民への聞き取りなどで、調査成果データの整理では研究補助者5名の協力を求めた。本調査の成果は、阿蘇の重要文化的景観ならびに世界文化遺産指定に向けての基礎資料としても活用される予定である。また、平成24年度は前年度に現地調査を実施した阿蘇郡小国町での調査成果を集成し、『筑後川源流域の文化的景観を支えるムラの営み』を発刊した。本書の作成についても研究補助者6名の協力を得た。なお、小国町での調査成果も用いて作成した論文「地域社会の多層性とその歴史形成」を、吉村豊雄氏と私の編著である『阿蘇カルデラの地域社会と宗教』に収めて発表した。 災害観と生業戦略については、研究成果を論文「クリーク農村の自然災害と生業戦略」にまとめ、『日本史研究』597号に掲載された。本論文では、近世末期に農事記録を執筆した一農民の災害観にも焦点を当てた。そこで論じた自然災害に対する認識とそれに基づいた生業戦略の問題は、本研究課題の一環として位置づけることができる。 動植物観と環境文化については研究論文の発表には至らなかったが、前年度に引き続き中世の動植物利用と村掟の中近世比較に関する検討を進めた。 また、自然観の考察に資する研究文献を幅広く収集し、理論と諸資料の分析方法を学んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究の目的」に掲げた①環境認識語彙の時代間比較のうちマクロ分析に関しては、中世の分析は順調に進んだが、対応する近世の語彙分析は遅れている。環境認識語彙のミクロ分析は計画通りに進んでいる。目的②の動植物観と環境文化は、中世の動植物利用と村掟の中近世比較に関する検討を進めたが、研究論文にまとめるまでには至らなかった。目的③の災害観と生業戦略については、クリーク農村を対象にした研究成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に果たせなかった動植物観と環境文化に関する研究論文をまとめ公表したい。また、前年度に現地調査をした南阿蘇村大字長野の調査成果を集成し、研究資料としての活用を図る。 さらに、最終年度にあたるので、「研究の目的」に掲げている三方向からの研究成果を相互につきあわせて、中世から近世にかけての自然観の時代別変遷とその変容過程を総体として明らかにするための枠組み構築に全力を注ぎたい。この枠組みの論点については、歴史学関係の国内の学会や学際的なプロジェクトの場で報告し、意見を交換する。そして、5年間の研究成果の社会還元に向けて、論文集公刊の準備を進めていく予定である。
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Research Products
(5 results)