2011 Fiscal Year Annual Research Report
帝国の少女の植民地経験―京城第一高等女学校を中心に
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21520682
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Research Institution | Hokkaido Information University |
Principal Investigator |
平子 玲子 (広瀬 玲子) 北海道情報大学, 情報メディア学部, 教授 (60216596)
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Keywords | 植民地経験 / オーラルヒストリー / 女学校 / 同窓会 / 引揚げ |
Research Abstract |
今年度実施した概要は次のとおりである。 1.一昨年作成したアンケート調査票について、1名から解答を得た。これで21名から回答を得たことになった(32名に依頼)。 2.アンケート解答者のうち、インタビューに応じてもよいと言ってくれた2名にインタビューを行った。これでインタビューに応じると申し出たすべてのインフォーマントにインタビューを終えた。 3.昨年度のインタビュー記録(録音)6人分と今年度のインタビュー記録(録音)2人分を文字化した。これを印刷し、インフォーマントに送り内容をチェックして返送してもらった。これですべての録音の文字化が終了した。 4.アンケート21名分を集計し、表に整理した。この整理をもとに京城第一高等女学校での体験・植民地での少女たちの体験をまとめることができた。植民地朝鮮で、比較的豊かな階層の家庭に育ち、高いレベルの教育を受けたという限定された世界での植民地経験である。しかしそこには植民地での市民生活の多様な側面がちりばめられている。内容を、(1)第一高女での授業(2)学校行事(3)良妻賢母育成にとどまらぬ教育(4)戦争遂行体制と第一高女(5)植民地認識~朝鮮・朝鮮人をどのように見ていたのか(6)敗戦~大日本帝国の崩壊をどのように迎えたか(7)第一高女の終焉(9)引揚げとその後(10)植民地支配批判の契機という項目で整理した。内地の女学校に比較して教育内容は高く、少女たちの大半は上級学校へ進学することをあたりまえと意識していた。植民地認識は個人による差異がある。しかし居住空間において日本人と朝鮮人はほとんど分離されており、少女たちが接する朝鮮人の大半は使用人や、父の職場の人であった。朝鮮人の日常生活は少女たちの目にはほとんど映らない、認識しえない構造があった。これも植民地支配の暴力である。 敗戦と過酷な引揚げ体験は少女たちの人生を暗転させるできごととなった。引揚げ者として苦労の多い戦後生活の中から、植民地に暮らしたことの意味を問い返そうとするインフォーマントも出てくる。このような契機のなかに個人のレベルから植民地支配を総括しようとする動向を見ることができる。 5.16人のインタビューについてはいまだ分析しきれていない。非常に長時間に及ぶ内容は、アンケートの内容をさらに補完し、深めるものである。残された課題としてこれから取り組みたい。
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Research Products
(2 results)