2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520690
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川尻 秋生 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (70250173)
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Keywords | 平安時代 / 和歌 / 交通 / 私家集 |
Research Abstract |
今年度は、研究の二年目に当たり、基礎的な調査・研究を行った。 第一に、具体的地名を読み込んだ和歌の抽出を行った。前年までで『私家集大成』中古Iの中から、該当する和歌を拾い出す作業を行ってきたが、今年度は同書の残りの和歌を採録するとともに、『私家集大成』中古IIに対象を広げて検索することができた。ただし、完了しておらず、来年度も継続して作業を行う予定である。 第二に、参考文献を収集した。『夫木和歌集』『散木奇歌集』『為仲集』や『袋草紙』など和歌書に関する参考文献や地名との関係を示す論文などを収集した。 第三に、本格的な研究をはじめた。具体的な成果としては、『散木奇歌集』のなかに、大宰府から平安京までの地名を実際に読み込んだ和歌があることことを確認し、その行程を復元できることが判明した。現在の地名と対比する作業は継続中であるが、その他、牽船の仕方、平安京近くの淀川水系で、どの地点で河川交通から陸上交通に切り替えるかなど、興味深い点が指摘できる。来年度さらに深く掘り下げてみたい。 また、天皇の代替わりに行われる大嘗祭の際、つくられた和歌にも、平安時代の王権のあり方を示す興味深いものが多数見られることが判明した。この点の考察はまだ十分ではないが、奈良時代以前からの要素がみられると同時に、平安時代独自の要素もみられ、王権と和歌の関係を考える上では示唆に富む。来年度、とくに力を入れて研究するつもりである。
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