2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の都市地域社会と市政-大阪・京都・神戸の比較研究-
Project/Area Number |
21520701
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
松下 孝昭 神戸女子大学, 文学部, 教授 (10278806)
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Keywords | 学区 / 方面委員 / 社会事業 / 京都市 / 無産政党 / 市域拡張 |
Research Abstract |
当年度は1920年代後半から1930年代における京都市の地域社会に関する資料収集と解析に力点を置いた。具体的には、『京都日出新聞』『京都日日新聞』『大阪朝日新聞京都版』などのマイクロフィルムを京都府立図書館等で閲覧し、必要箇所をコピーした。また、京都府立総合資料館では府庁文書を閲覧し、京都市の社会事業に関する文書を収集した。社会事業年報の類は復刻版が出されているので、それはすべて通覧した。以上をふまえて、学区を単位とした京都市の社会秩序の上に、方面委員制度が接合される形で始動したことと、社会事業がそうした地域秩序と相互補完関係を保って展開したことが解明できた。1920年代前半までの時期に関しては、既に『歴史学研究』837号に発表した論文があるので、それの続編にあたる論文を執筆している。そこでは、地域秩序と社会事業の補完的関係が1920年代後半期から1930年代にまで継続することと、1931年の京都市の市域拡張に際しても、新市部分にまで拡張されたことなどを明らかにしている。また、この時期の学区会議員選挙の動向にも検討を加え、普選施行という政治構造の激変にもかかわらず、区議選では無産政党の進出が低調であったことを明らかにした。その根底には、以上のような地域有力者による秩序形成があったものと考えられる。ただし、崇仁学区で1930年代に展開した水平社支部による方面委員・区議への闘争は、地域変革の可能性を内在したものとして注目される。以上でもって京都市の研究を終え、大阪・京都両市との比較を意識しつつ、23年度には神戸市研究にとりかかり、その類似点と差異性とを解き明かしていきたい。
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