2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の都市地域社会と市政-大阪・京都・神戸の比較研究-
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21520701
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
松下 孝昭 神戸女子大学, 文学部, 教授 (10278806)
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Keywords | 方面委員 / 社会事業 / 学区 / 都市地域社会 / 京都市 / 大阪市 / 神戸市 / 無産政党 |
Research Abstract |
当年度は、神戸市研究のための史料収集を強化しつつも、まずは、京都市研究の総まとめを行うことに重点を置いた。既に収集を終えている『京都日出新聞』『京都日日新聞』『大阪朝日新聞京都版』などの関連記事や、京都府立総合資料館・法政大学大原社会問題研究所等が所蔵する原文書、さらには社会事業関係の年報類を読み込み、多角的に分析して論文の形にまとめ、本務校の紀要『神女大史学』28号に発表した。これは、1920年代前半までの時期を対象として既に『歴史学研究』837号に発表した論文の続編にあたるもので、同一の視角から1920年代後半から1930年代の状況を追跡したものである。そこでは、学区単位の方面委員を中心とする地域秩序と社会事業施設の配置の相互補完的関係(前稿参照)が、1930年代にまで継続することを明らかにした。また、こうした仕組みは、1931年に京都市に編入された周辺部学区にも適応されていく。さらに、この時期の学区会議員選挙の動向にも検討を加え、普選施行という政治構造の激変にもかかわらず、区議選では無産政党の進出が低調であったことを述べた。その要因は、以上のような地域有力者による支配秩序が機能を発揮し、低所得層の生活上の不満を吸収していたからであると論じた。ただし、崇仁学区で1930年代に展開した水平社支部による方面委員・区議への闘争は、地域変革の可能性を内在したものとして注目される。以上で京都市研究は終えたので、今後は続いて神戸市研究のまとめを行いたい。基礎資料となる『神戸又新日報』と『神戸新聞』における該当記事の検索と収集は終えている。それに加えて大阪市研究の見直しも行い、3市の比較検討という最終的な課題に迫っていきたい。醸
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
京都市関係の史料の収集を終え、論文の形でまとめることができた点は順調であると言える。また、神戸市研究に関しては、基礎資料となる『神戸又新日報』と『神戸新聞』の該当記事の検索と収集はすべて終えている。残る『大阪朝日新聞神戸付録』の閲覧と収集が、最終年度に持ち越された点は不安が残るが、既に収集した記事等を読みこむ作業を並行させて、神戸市における地域社会と市政の関連についての見通しを立てていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
京都市の研究を終えたので、本年度は、同時に進めている神戸市研究において、未見に属する『大阪朝日新聞神戸付録』の閲覧と関連記事の収集に努める。また、神戸市文書館・東京市政調査会市政専門図書館・法政大学大原社会問題研究所などの史料については、未収集のものが若干あるので、その閲覧と収集につとめる。大阪市研究に関しては、大阪市公文書館・大阪府公文書館などが所蔵する原文書にあたり、既発表の成果の見直しを行う。以上の作業をとおして、大阪・京都・神戸の3市の比較という当該研究の最終目標に到達したい。
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