2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520702
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
福田 千鶴 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10260001)
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Keywords | 日本近世史 / 女性史 / 史料学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本近世武家社会における奥向構造の研究を進めるうえでの研究環境を整えるために、奥向構造にかかわる史料の史料学的研究を進めるとともに、史料を翻刻・紹介して史料利用環境の共有化をはかることにある。 3年度計画の2年目として、本年度は前年度に積み残していた毛利家文書に伝来する女性消息319点の読解を進め、ほぼ原稿化を終えることができたが、女性消息は予想していた以上に難解であったため、さらに最終年度にかけて読解の精度を高めていく必要を課題として残した。内容的には、大名家の正妻がはたした役割、とくに江戸不在中の夫(大名)にかわって家を守るだけでなく、情報を収集し、国本に伝えるなど、重要な役割をはたしていたことがうかがえた。なかには時候伺いなどの形式的な内容のものもあるが、近世前期の奥向研究をすすめていくうえで消息分析の有効性が確認できた。 また、前年度に分析することを断念した彦根井伊家文書にかわる史料の発掘を進めた。まず、国立公文書館内閣文庫に所蔵する「女中帳」「渓心院文」などを収集した。さらに、長野市立博物館寄託の花井家文書も調査、写真撮影をおこなった。これらは近世初期・中期の奥向研究をすすめていくうえで希少な史料であることが確認されたので、最終年度に引き続き分析をすすめ、研究成果を公表していくことにしたい。 なお、前年度に収集予定としていた国立公文書館内閣文庫所蔵「言贈帳」も調査し、江戸城中奥の日常生活を知るうえでの重要な史料であることが確認されたが、これも30冊以上の点数があるため、全冊を収集することはできないと判断されたので、大奥女中と大名家奥女中の交流がわかる「女中帳」3冊を優先して収集することにした。
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