2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520702
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
福田 千鶴 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10260001)
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Keywords | 日本史 / 女性史 / 史料学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本近世武家社会における奥向構造の研究を進めるうえでの研究環境を整えるために、奥向構造にかかわる史料の史料学的研究を進めるとともに、史料を翻刻・紹介して史料利用環境の共有化をはかることにあった。 本年度は、研究計画の最終年度として、報告書の作成に重点を置いた。前年度までにすすめた真田奉公人請状47点の解題を作成し、利用の便をはかるために人物注の作成などを行った。「女中奉行日記」1冊については井手麻衣子氏に解題を作成してもらい、人物や女中構造の理解を助けるために来見田博基に鳥取藩政資料のなかの「支配帳」から女中に関する情報を抽出してもらい、数年後の変化がわかるデータベース)(「鳥取藩の御女中一覧」)を作成、提供してもらった。毛利家文書319点に関しては、引き続き読解の精度を高めたが、解読の正確さについて不安が残ることから、今回の報告書への掲載は見送ることにした。その結果、翻刻紹介できた史料は19世紀のものに限られたが、データベースを参照することで、近世の前期から後期にかけての奥向構造の変化を通時的に理解できることが可能になったことは大きな成果であった。また、翻刻を終えた女中奉行日記を改めて精読すると、わずか1年間の日記に過ぎないと思っていたが、奥向で暮らす女性たちの生活や表との関係がよくわかる史料であることが確認できたことも今後の奥向研究を進めるうえでの大きな発見であったと思われる。女中奉公人請状も、近世後期の女性労働力や雇用契約を考えるうえでも極めて重要な史料紹介と位置付けることができる。 以上の成果をもとに、298頁の研究成果報告書を刊行することができ、調査先や研究関係者・機関への送付を終えた。よって、日本近世武家社会における奥向構造の研究をすすめるうえでの研究環境を整えるという目的は、十分に達成されたと考える。
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