2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520704
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
長谷川 博史 Shimane University, 教育学部, 准教授 (20263642)
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Keywords | 戦国期権力 / 港町 |
Research Abstract |
平成21年度においては、研究実施計画の前半部分にあたる各港町の内部構造の検討を中心に進めた。まず、中世山陰水運を特徴づける宍道湖・中海沿岸地域について、白潟と安来の景観復元作業を進め、杵築についてもその構造的特質について再検討を試みた。また、瀬戸内海地域では、尾道と鞆の形成過程について、特に空間構造の特質や変化の様相を追究した。西国の港町に関しては、文献史料の制約があるためこのような基礎的な検討自体が少なかった。港町の基本的な骨格は近世に完成されており、中世以前との間に大きな懸隔がある場合が支配的であることは、中近世移行期の沿岸部に大きな変動があったことをうかがわせるものであり、その具体的様相を引き続き解明していくことは、日本列島全体の歴史を考える上で欠かすことのできないものと考えられる。 さらに、研究実施計画の後半部分にあたる周辺地域・海域における港町の位置づけに関する検討については、温泉津やその周辺港湾のみならず、中近世移行期の日本列島全体の変動に関わる、鉱山都市石見銀山について、16世紀後半における居住者の実態を追究した。その結果、16世紀において石見銀山に関わる人々の移動・移住がきわめて広域的であったこと、本拠を確保したまま鉱山都市に居住する多くの人々が、秀吉の大陸侵攻に伴う大規模増税の中で翻弄されたことが、江戸時代の鉱山や鉱山政策の特質に大きな影響を与えたことを明らかにした。このような視点をふまえることが、当該期港町の全体的な存在形態や諸権力との関係を明らかにするためには、不可欠であると考えられるので、引き続き検討を深めたい。
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Research Products
(4 results)