2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルタイ諸地域での遺跡遺物の再利用を通してみた突厥遊牧民の祖先崇拝の文化史研究
Project/Area Number |
21520719
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大澤 孝 大阪大学, 世界言語研究センター, 教授 (20263345)
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Keywords | 突厥 / ウイグル / 石人遺跡 / モンゴル高原 / 石囲い / カラバルガスン城 / ソグド人 / マニ教 |
Research Abstract |
本年は,まずモンゴル高原における突厥・ウイグル時代の遺跡および碑文を中心にモンゴル国科学アカデミー考古学研究所との学術協定に依拠した2年目の現地調査を実施した。今回は主にアルハンガイ県のイフタミル・ソムの石人遺跡,タリアトの石人と石囲い遺跡、現在、ドイツ・モンゴル合同発掘が行なわれているウイグル時代のカラバルガンスン城の発掘箇所とその近辺で最近発掘されたウイグル時代の遺跡を現地の発掘担当者の協力を得て視察した。またバヤンホンゴル県のシャタル・チョロー遺跡、ボルガン県のウイグル時代に建造されたバイ・バリク城とチレン・バルガス城の位置関係や関連施設についても、比較調査を行なった。また中央県のザーマル・ソムで近年発掘された場所を訪れ、景観調査を行なった。シャタル・チョロー遺跡の石郭の前面の中央に刻まれた二対の雄ヤギ・タムガの存在は、ハンガイ地区のみならず、ハンガイ山脈南方にも突厥政権が直接及ぶ重要地区であったということを証する点で意義深い。 特に、石囲いの東に東面して立つ石人に連なるように未加工のバルバル石が連なるのが突厥時代の遺跡の特徴であるのに、イフタミルとタリアトの石人遺跡のバルバルは、石囲いの西面で、西方へ連なっているという点で特異であり、今回はその原因を探るための立地条件や他の可能性を考える上で貴重な情報を得たといえる。またカラバルガスン城の調査では、中心部からほど遠くない地点にいくつもの土墓があり、そのなかには印欧的特徴をもつ人骨が発掘されたとの情報は、ウイグル文化にマニ教などの外来文化をもたらしたソグド人の存在を伝える文献記載とも符合し、今後,本遺跡の性格を考察する得うえで重要な手がかりと見なすことができる。また本年度には昨年度以来の調査結果を踏まえた分析結果をいくつかの国際学会などで発表し、知見を共有することができた点は幸いであった。
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