2011 Fiscal Year Annual Research Report
アルタイ諸地域での遺跡遺物の再利用を通してみた突厥遊牧民の祖先崇拝の文化史研究
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21520719
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大澤 孝 大阪大学, 世界言語研究センター, 教授 (20263345)
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Keywords | 突厥遊牧民 / アルタイ / 遺跡・遺物の再利用 / モンゴル国 / ザーマル遺跡 / 唐式墳墓 / 銀器 / ルーン文字 |
Research Abstract |
本年度の研究では,突厥遊牧民が自らの言葉で刻んだ文字を持つ遺跡や遺物資料の中から,その文字がその遺跡や遺物よりも後代に作成されたことが明らかな遺跡・遺物を対象として,突厥遊牧民が徐の遺跡遺物にいかなる扱い方をしたのかという観点から,彼らがより古い時代の遊牧民に対して抱いていた感情や心理を明らかにしつつ,彼らの信仰観,世界観や先祖崇拝の実態に関して明らかにすることを目的としている.今年度では,筆者が主にモンゴル国を始め,南シベリアのハカス,トゥヴァ,アルタイ共和国などのアルタイ山脈周辺諸地域で現地の研究機関と共同して行った国際共同調査の際に,収集した関係資料に関して,銘文の文献学的再検討を行った.その中でも,昨年度に訪れたモンゴル国のボルガン県で発見されたザーマル村の唐式墳墓から出土したとされる銀器に関して考察を行った.この銀器の底の中央にはタムガ状の記号の他,その周りを古代テュルク・ルーン文字が,ナイフなような鋭利な刃物で刻まれているのを確認し,その解読を行うと同時に,この銘文が刻まれた銀器との関係を探った.これまでは南シベリア諸地域からはこうした副葬品としての銀器や金器が多く見つかっているものの,その用途や意義に就いては,推測の域を出ないものであったといえる.その意味で,本資料は,これまで不明であった金器や銀器などの容器が持つ歴史的意義が明らかにされる可能性があるという意味で,大きな収穫と角度から提供するということが見込まれ,これらからの遊牧研究にも大きな成果をもたらすことが期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で私が提起した視点は,ユーラシア草原のテュルク系及びモンゴル系遊牧民の精神文化,特に祖先崇拝の形態を明らかにするのみならず,ひいては彼ら遊牧民に特有のシャーマニズム的,アニミズム的世界観や死生観を考える上で,これまでほとんど看過されて来た,そして異なった観点から,その諸相をより具体的に明らかにすることができるという観点から,今後の更なる継続と発展の望める研究課題であるということができよう.それ故に,今後とも現地の研究機関と共同して,現地の遺跡や遺物を調査していくことで,関係事例の収集と上記の視点からの文化史的分析を行うように努めたいと考えている.
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