2011 Fiscal Year Annual Research Report
スペイン領フィリピン社会における変動期の諸相―「マニラ公正証書原簿」の研究―
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21520721
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
菅谷 成子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90202126)
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Keywords | 東南アジア史 / フィリピン / マニラ / スペイン植民地 |
Research Abstract |
本研究計画は5年計画で、本年度はその第3年度であった。昨年度に引き続いて、先行研究の検討を継続し、また昨年度の調査で新たに収集した「マニラ公正証書原簿」を含めて、これまでに入手した資・史料の整理・分析作業を行った。また、学内の共同研究プロジェクト「歴史と考古における資料学研究の方法」および「文化伝統の継承とアイデンティティ形成-記憶の場の比較研究-」に参加し、それらの活動をとおして、前者においては「マニラ公正証書原簿」の分析手法について、アジア史における資料研究のあり方との比較の観点から、後者については、スペイン領フィリピン社会の変動期について「記憶の場」としてのスペイン領マニラという観点から諸事象を明らかにするという分析視角において「マニラ公正証書原簿」の史料的価値を検討する視点を得ている。 本年度の現地調査としては、校務の関係もあり当初の計画より短期間となったが、2012年3月10-21日の日程でフィリピンに滞在し、フィリピン国立文書館において「マニラ公主証書原簿」および関連する史料の調査・収集を行った。「原簿」については、18世紀末葉から19世紀初頭の公証人の一部にかかって、昨年度と同様に、保存状態に応じて筆写、電子複写およびデジタルカメラによる撮影によって収集したので、これらの整理・分析作業を継続的に進める予定である。 これらの作業によって得られた知見を踏まえて、先行研究および関連のスペイン文書の分析を合わせた検討を行い、「スペイン領マニラにおけるコスモポリタン性と『他者』-19世紀初頭における植民地社会の諸相-」「スペイン領マニラにおける貿易の諸相-1803-04年のマニラ税関文書から-」等を著して、「マニラ公正証書原簿」にみえる具体的事例を紹介するとともに、その背景にある当時の対外貿易事情について検討し、フィリピン社会の変動劾の諸相の一端を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては、研究実施計画に沿って、おおむね順調に進展しているといえるが、やはり校務が繁忙であるうえに、その他の研究上の責務があるため、なかでも海外調査について日程調整が難しく、夏期休業中に予定していたフィリピンの文書館における資料調査・収集については、期間を短縮した上で、年度末に実施したことがあり、その面に関連した作業においては、やや遅れている面がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も昨年度に引続いて「マニラ公正証書原簿」の調査・収集および分析作業を継続する。また、校務の繁忙やその他の研究責務の遂行が予想されるが、可能な限り能率化を計り、必要な海外文書館調査・収集の時間を確保するように努める。しかしながら、その時間が限られる場合を含めて、本年度は、研究計画の第4年度であるので、最終年度における研究成果の報告・発表を視野に入れて、国内での作業として、これまでに収集した「マニラ公正証書原簿」および、その他の関連史・資料につき、整理・分析作業をよりいっそう進める。
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Research Products
(3 results)