2009 Fiscal Year Annual Research Report
人間の安全保障の観点による上海のユダヤ人難民社会の研究
Project/Area Number |
21520722
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 吉雄 Kyushu University, 大学院・言語文化研究院, 教授 (70231975)
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Keywords | 上海 / ユダヤ人 / 難民 / 人間の安全保障 |
Research Abstract |
本研究計画は1938年~1951年に上海に存在したユダヤ人難民1万7000人のコミュニティについて、我が国の外交政策における基本方針のひとつである「人間の安全保障」の観点から分析し、1990年代以降世界各地で頻発する難民問題(国際強制移動)の予防や解決に資する知見を得ることを目的とする。 平成21年度は、難民社会における人間の安全保障にとって最も重要である医療・公衆衛生の問題を取り上げた。 1) 上海に到着したユダヤ人難民5351人の住所録『上海移住者住所録』(1939年11月)と、彼らの多くが住み、後に全ユダヤ人難民に居住地(上海ユダヤ人ゲットー)として指定された虹口・揚樹浦地区を管轄する提籃橋分局特高股が1944年8月に作成した『外人名簿』(12309人のユダヤ人難民を掲載)およびその他の資料の照合により、医師の人数・住所・就業場所等の動向を追跡し、上海ユダヤ人難民社会における医師の特殊性を明らかにした。 2) 中欧出身のユダヤ人難民たちが上海において直面した未知の自然環境・衛生環境・伝染病や戦時の栄養失調は人間の安全保障にとって重大な脅威だった。当時の新聞・難民のメモワール等の各種資料や先行研究を基に、医師たちが資金不足・物資不足と闘いながら、問題を解決していった過程を分析した。 3) 駐リトアニア副領事杉原千畝がビザを発給した2140人のポーランド系ユダヤ人難民は、約半数が極東に脱出し、その多くが上海に逃れた。外交史料館の資料を基に阿部(研究代表者)作成した杉原のビザ発給リストを中国の猶太難民在上海証念館に提供し、同記念館が現在実施中のユダヤ人難民データベース構築に貢献した。
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Research Products
(2 results)