2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520730
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
蒲 豊彦 京都橘大学, 文学部, 教授 (30233919)
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Keywords | 中国近現代史 / 地域史 / キリスト教 |
Research Abstract |
論文としては、「近代広東の民衆組織と革命」(高橋伸夫編『救国、動員、秩序-変革期中国の政治と社会』慶応義塾大学出版会、所収)を刊行することができた。民間の自立した自助運動の視点から、1890年代から1920年代までの広東東部史を整理したものであり、1920年代にいたっても、農村社会の基層部分には清朝期と同様の行動様式が存在したことが確認できた。これによって、筆者にとって研究上の空白となっていた19世紀と20世紀の境界部分を、いくぶんなりとも埋めることができ、本研究の目的である19世紀中葉から20世紀前半までを見通した地域史の構築に、一歩近づくことができた。 また、学会発表として、「近代中国の大量死と政治的暴力-広東東部地域を中心として」というテーマで報告を行った(アジア政経学会)。これは、「大量死」という視点にたって19世紀から新中国成立後までを見通したもので、地域社会の連続性と、海外との関係が深くなるにともなう断続性とを確認することができた。 さらに、「キリスト教と近代中国社会-魂の救済から社会の救済へ」を執筆し、キリスト教の受容と慈善活動の展開という観点から、地域社会の変化を考察した。宣教師の側においては従来の布教観からの脱却、また信者、住民の側としては救国、またその基礎としての国家への意識が育つことを通して、慈善事業が地域に根付きはじめたことを、指摘した。本論文はまもなく刊行の予定である。
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