2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520730
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
蒲 豊彦 京都橘大学, 文学部, 教授 (30233919)
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Keywords | 中国近現代史 / 地域史 / キリスト教史 |
Research Abstract |
論文として、「キリスト教と近代中国社会-魂の救済から社会の救済へ」(ひろたまさき、横田冬彦編『異文化交流史の再検討』平凡社、2011年)を発表した。これは、本研究が主題とする広東東部地区に焦点をあてつつ、19世紀末から20世紀初頭にかけて地域住民のなかに起こった、ある種の意識の変化を跡づけたものである。このころ中国のキリスト教は歴史的な転換を遂げつつあった。個人の魂を救済というそれまでの目的に、社会事業という新しい任務が加わってきたのである。中国人信者の側も、従来は生活上の利益を得ることが入信のおもな目的だったが、YMCAの青年信者を中心として、社会および社会活動へと視野の広がりを見せはじめた。すなわち、北京や上海などの大都会の知識人のみならず、地方の田舎でも住民自体に重要な変化の起こりつつあったことが確認できた。これによって、本研究の目的である19世紀中葉から20世紀前半までを見通した地域史の構築にかんして、空白部分を一部埋めることができた。 また、論文としては発表していないが、明の中期から清の中期にいたる時期を対象として、広東東部地区の村落史を整理した。同族村的で、かつ自立性の強い村落がどのような経緯で成立し、どのように存続し、またときにどのように地方官に抵抗したのか、という歴史である。この整理によって、本研究が扱う特徴的な村落にかんして、その初期の発生史を確認することができた。
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