2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520732
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池谷 文夫 茨城大学, 教育学部, 教授 (00114009)
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Keywords | バーゼル公会議 / 教会改革 / 帝国改革 / マルティン・マイア / グレゴール・ハイムブルク / 教皇ピウス2世 / ニコラウス・クザーヌス / 帝国議会 |
Research Abstract |
平成23年度の研究は,中世末期(14世紀末頃から15世紀末頃)における,「ドイツ帝国」化した神聖ローマ帝国と,皇帝=ドイツ王の理念と現実の相克の解明を進めることを継続した。 バーゼル公会議(1431~1449年)時代の教会側論客であったニコラウス=クザーヌスの教会と帝国の改革への提言及びその根底にある彼の政治思想,法権力論を,彼と関わりのあった人文主義者でありかつ法学者・政治顧問も勤めた二人の人物,グレゴール・ハイムブルクとマルティン・マイアの事蹟を追うなかで,対立関係の中で検証する試みを進めた。 この3人と密な関係を持ち,自らも人文主義者であり,皇帝フリードリヒ3世の書記局長を務めた前身を経験したが,教皇座に就く過程以後は2人の人文主義者ハイムブルク,マイアと対立する姿勢と行程を持した教皇ピウス2世(エネア・シルヴィオ・デ・ピッコローミニ)の政治的行動にも視野を広げた。ピウス2世の場合には,その基本姿勢の変化について,公会議運動最盛期における様々な思潮との関連で検証を進めた。特に彼が出した,公会議禁止ともとれる教勅についての分析を進めている。 ハイムブルクとマイアの事蹟の検証を進める過程で,この二人の法律家・政治家としての軌跡をたどりつつ,邂逅・接近・協働と対立・乖離を繰り返しつつ辿られた両者の人生の営みを跡づける作業を進めている。 平成22年度に行った,市民階層と小領主階層に属する法律家・実務家の帝国政治への関わり,帝国改革への貢献についての研究と,本年度のやはり広い意味での市民階層に属する人文主義者・法律家の帝国政治や教会政治への関わりの検証を通して,中世末期のドイツ帝国の現実の政治状況を究明する上での見通しを立てることができた。研究最終年度である24年度には,23年度の研究により得られた知見及び成果を含み研究集成を行えると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度の市民層及び小領主層出身の2名の法律家・実務政治家の帝国政治への関与を検証したが,23年度は,それを承けて,広く市民層出身の法律家,実務政治家かつ人文主義者である2名の事蹟を並立的・交差的に検証することができた。教会改革者側でない人物研究により,中世末期の政治と政治思想に関する深化した研究を遂行することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,23年度の研究に続けて,教皇ピウス2世及び枢機螂司教ニコラウス・クザーヌスの政治的活動と世俗諸侯側のこれに対する反応や対抗関係を,諸侯側の論客であり反教皇的姿勢の強い,現実に破門をされてもいる,グレゴール・ハイムブルクの論著を分析することにより,明らかにして行く。
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