2009 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ社会保障思想のトランスナショナルな伝播に関する歴史研究
Project/Area Number |
21520734
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 千登勢 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (70309863)
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Keywords | 西洋史 / アメリカ史 / 社会保障 / ニューディール |
Research Abstract |
平成21年度は、研究テーマの中でも特に1930年代の健康保険制制度の設立をめぐる政治過程について、ヨーロッパ諸国のアメリカ合衆国への思想的な影響に関する、一次史料と二次史料の収集と検討を行った。1月にアメリカのコネチカット州ニューヘイブンにあるイェール大学へ行き、1週間、大学の文書館で一次史料の調査、収集にあたった。具体的には、1934年から1935にかけて、ニューディール政策の一環としてフランクリン・ローズヴェルト大統領によって組織された経済保障委員会が、社会保障法案の作成に際して、健康保険に関する問題がどのように政権の内部で議論されたのかを明らかにすることが目的であった。とりわけ、同委員会が任命した医療諮問委員会で中心的な役割を果たした、ミルバンク記念基金の研究員で、公衆衛生の専門家であったI・S・フォークと著名な外科医でイェール大学メディカル・スクールで教鞭をとっていたジョン・クッシングの個人文書を閲覧し、国民皆保険による健康保険制度の導入を目指したフォークと、自主的な加入による健康保険を支持したクッシングの対立を明らかにするための史料を入手した。 また、社会保障法をめぐろ思想の国際的な伝播を孫蛭するために研究書を購入した。特に20世紀初頭の革新主義の時代に一時期、大きな盛り上がりを見せた社会保険法の制定運動に関する書籍、その際のドイツやイギリスをはじめとする社会保険制度の先進国やILOの思想的な影響に関する書籍、またアメリカ医師会など、専門職としての医師団体がこうした思想的な潮流をどのように理解し、アメリカ独自の制度のあり方や価値を主張するに至ったのかを論じた書籍や論文などを中心に入手した。
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