2010 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける社会保障思想のトランスナショナルな伝播に関する研究
Project/Area Number |
21520734
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 千登勢 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70309863)
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Keywords | 西洋史 |
Research Abstract |
22年度から繰り越した研究費でスイスのジュネーブにある国際労働機関(ILO)の図書館・文書館へ資料収集に行った。2週間の滞在中、図書館では司書と相談しながら、ILOの設立の経緯、ILOの初期の活動、1930年代前半のアメリカのILOへの加入、第二次世界大戦中のILOとアメリカに関する研究書や刊行物、雑誌、パンフレット、博士論文などを閲覧し、必要に応じて複写した。それによって、なぜアメリカが国際連盟に未加入でありながら、戦間期にILOへ専門家を派遣し、非公式な形ではあれ、調査・研究に携わっていいたのか、また大恐慌の際中でニューディール政策を始める段階で、ローズヴェルト政権がILOへの加入を決断したのか、その歴史的な経緯と目的を考察するための資料を揃えることができた。さらに、第二次世界大戦中のILOとアメリカについては、戦後のILOにおけるアメリカの主導的な役割を築くために、どのような取り組みが行われていたのかを、文献を通じて理解することができた。またリサーチの後半では、ILOの文書館でアーキビストの助言を受けて、第二次世界大戦の終結後、ILOの要職についたアメリカ人の個人文書を閲覧した。これらの資料収集の目的は、アメリカの社会保障制度の設立や労働立法にかかわった人々が、ILOを通じてヨーロッパ諸国の社会保障や労働法の経験や考え方をどのように学び、それをいかにアメリカの政治文化に適応させたのか、また戦後、国際労働法という新しい領域を、世界におけるアメリカのプレゼンスを高めるという目的の下、ILOを通じてどのように発展させたのかという問題を検討することにある。収集した資料をさらに読み込み、平成24年度中に論文としてまとめる予定である。
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