2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520742
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
西村 善矢 名城大学, 人間学部, 准教授 (30402382)
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Keywords | 中世史 / 史料論 / イタリア |
Research Abstract |
本研究の最終年度である平成23年度に実施した研究の主たる内容は以下の4点である。 1、史料調査。平成23年11月、フィレンツェ国立古文書館ならびにシエナ国立古文書館にて所領経営に関わる文書調査を実施し、地代負担者の名前や地代の種類、量を列挙した財産管理記録数点をはじめとする史料の写真版を入手した。 2、過去3年間に収集した11・12世紀トスカーナ地方の財産管理文書約20点を対象に、史料論研究の基盤となる類型論的整理を行った。そこから、財産管理記録が毎年作成されるべき会計文書と、たえず加筆・修正の手を加えることを前提とする地代目録という二種類の文書カテゴリーに分類されることを明らかにした。 3、以上の類型的整理をふまえて、地代リストの形式と内容を分析した。具体的には、シエナ司教座聖堂参事会に伝来する会計文書型の地代リストと、パッシニャーノの修道士たちの手による地代目録型のリストを比較検討した。 4、現地の研究者と意見交換を行った。とくに古文書学者アントネッラ・ギニョーリ(ローマ大学ラ・サピエンツァ校)からは、羊皮紙に書かれたオリジナル文書の読み方について有益な助言を受けた。 本研究の意義は、財産管理記録の作成様式や利用方法、記載内容について文書の類型的整理をはじめとする史料論的考察を加えることにより、'中世初期的な所領明細帳から中世盛期の地代帳へ、そして中世後期の会計記録への進化という、所領経営に関わる財産管理記録について従来想定されてきた単線的な発展モデルに再検討を迫る点にある。したがって当研究の意義は、究極的には財産管理記録の発展に適合的な見解、すなわち古典荘園からバン領主支配への発展を想定する中世イタリア領主制の通説を見直すための起爆剤となりうる点にある。
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