2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520744
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野澤 透 Kyoto University, 文学研究科, 准教授 (90271832)
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Keywords | 冷戦 / アメリカ合衆国 / 中東 / 外交 / オリエンタリズム |
Research Abstract |
平成21年度は,初年度ということもあり,本補助金の申請以前から取り組んでいた研究テーマに一応の区切りをつけるとともに,それを本研究の課題に接合していく作業に取り組んだ。論考"The Search for an American Way of Nuclear Peace : The Eisenhower Administration Confronts Mutual Atomic Plenty"は,本研究課題において重要な意味を有するアイゼンハワー政権の安全保障政策を核抑止問題に焦点を当てつつ再検討したものであり,本研究を進めるための基礎作業と位置づけられる。学会発表「アイゼンハワー政権と同盟政策」は,前記論考を出発点として,アイゼンハワー政権の対西欧・北大西洋条約機構(NATO)政策と対中東・バグダード条約政策の比較を試みた。米国の対西欧政策と対中東政策が異質であることは自明であるが,その相違がどのような形態を取り,どのような構造に発し,その起源が奈辺にあるのか,具体的に分析した先行研究は存在しない。本学会発表では,アイゼンハワー政権期の国務省,特にダレス国務長官が,西欧諸国の世論の動向に細心の注意を払い,主要野党への政権交代が実現した場合にも持続可能な同盟関係を構築しようとしていた点に注目した。すなわら,自由主義的民主主義という西欧諸国の政治形態が,同盟的政治的基盤を拡大しようとする米国側の動きにつながったのである。米国は中東諸国の世論にも関心は示したものの,独裁的あるいは権威主義的な支配体制をしく同諸国に対する対外政策においては,同盟の政治的基盤を拡大しようとする契機がきわめて希薄である。この相違が,西欧と中東に対する米国の政策の質的な相違の一要因になっていると考えられる。本学会発表をもとにした論考を,現在作成中である。
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