2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀におけるアメリカの多元的国民統合と人種境界の形成
Project/Area Number |
21520746
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中野 耕太郎 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00264789)
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Keywords | 西洋史 / アメリカ史 / ナショナリズム / 人種 / 移民 |
Research Abstract |
本科学研究費プロジェクト(3年計画)の第2年目となる本年は、引き続き第一次大戦後の人種境界形成プロセスを検証するとともに、これに先立つ戦時体制がいかに移民を含む多元的国民統合と人種分離をともなう内的他者創出を契機づけていったかを研究した。成果の一部は2篇の論考、「20世紀国民秩序と人種の暴力-1919年シカゴ人種暴動の検討」(『歴史科学』)と「浄化される民主主義-『人民』から国民へ」(共編著『アメリカ合衆国の形成と政治文化』所収)として刊行した。特に、当時の移民と黒人の投票権問題を扱った後者の考察は、アメリカの政治文化史全般を対象とした書物全体の編集に携わったこともあり、本研究の課題をより大きな歴史的コンテクストの上に位置づけるうえで有益な作業だった。夏季にはシカゴ大学でRobert E.Park文書を閲覧した。Parkは移民の同化理論で著名な社会学者であるが、同時に第一次大戦期の南部黒人の北部移住に深く関与した入物でもあった。同文書の調査・分析から、この時期同時に進行した、南・東欧移民の国民的包摂とカラーラインの形成に、知識人がいかに関わったかを検討した。上の考察と並行して、第一次大戦期の国民動員の性格を害そこに戦後の人種境界形成の淵源を見る観点から、検証する作業を進めた。成果の一端として、年末に京大人文研主催のシンポで「アメリカ化の戦争」なる試論を発表した。W.ウィルソン政権の戦争政策の根本を国内・国際のアメリカ化運動と捉え、その施策の中に統合と排除の複雑なメカニズムが働いていたことを明らかにした。この検討をより実証的に進めるべく、3月にはワシントンDCで実地の史料調査を行った。具体的には、議会図書館と国立公文書館で、外国人兵士と黒人兵士の処遇を示す訓練基地関連資料や軍情報部の記録を閲覧した。これらの史料の分析をとおして、第一次大戦の経験と戦後の人種境界形成をつなぐ経緯、事象が明らかになりつつある。
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Research Products
(4 results)