2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520756
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
坂下 史 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90326132)
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Keywords | 西洋史 / イギリス / 思想史 / 慈善 / 医者 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
本研究の目的は、18世紀後半から19世紀前半のイギリスで、地域社会に根差しながら様々な公共活動に関与したローカルエリートの世界観と社会的実践を明らかにすることである。この目的を達成するために、本研究は、日本国内での文献調査、イギリスでの史料調査、内外の研究者との交流による意見交換という三つの柱を立てている。 昨年度に引き続き、当該時期のイギリスにおける農業改良と医療に関する基本文献を収集し、またエドワード・リグビとカレブ・パリの公共活動の実態を解明すべく、関連情報の収集に取り組んだ。資料調査は日本とイギリスで実施され、日本では主に研究文献を集め、イギリスでは手稿文書を含む史料を閲覧収集した。今年度は、これまで後回しにされてきた慈善に関係する研究文献と史料の収集にも本格的に取りかかり、前者については基本的なものの収集はほぼ完了した。一方、後者は来年度に向けての準備が進められた段階である。研究交流に関しては、3月に台湾のイギリス史研究者であるChia-Chuan Hsieh(謝佳娼)氏(國立中央大學)を日本に招聘してWorkshopを開催し、多くの参加者を得て有意義な討論がおこなわれた。これに加えて、謝氏と共に、学習院大学で開催された国際シンポジウムにも参加し、研究代表者は一つのセッションの司会を担当した。 本年度は、これまでに日本で収集してきた文献と、イギリスで閲覧して写真に収めた資料を総合的に検討することで、当該研究に独自な視点をさらに明確化することに努めた。各種の電子データベースを利用してパンフレット類や新聞記事を収集し、その内容を分析する作業も引き続き継続中である。全体として、近代国家形成期のイギリスで公共政策や社会政策を、地域社会のレヴェルで担った人々の姿を浮かび上がらせるための作業がほぼ予定通りに進められたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代イギリスのローカルエリートの世界観と社会的実践を医業、農業、慈善という三つの視角から明らかにするという目的について、すでに医業と農業については一定の情報が蓄積されてきている。一方で、慈善という視角からの情報収集と分析には若干の遅れがみられ、この部分でのさらなる研究の進展が必要と考えている。23年度は研究成果の発表という点では必ずしも十分といえない面があった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記、11の「達成度」欄において略述したように、最終年度は慈善という視角をより重視する必要がある。これについては、9月に予定されている第7回日英歴史家会議の部会(仮題:Urban history and heritage)で、都市の慈善基金とその意味について研究報告をおこなう予定がある。また、本研究開始時からの協力者Joanna Innes氏(オックスフォード大学)、Rosemary Sweet氏(レスター大学)と研究交流をさらに密にして、この部分における研究の補強と進展を目指す計画である。
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