2010 Fiscal Year Annual Research Report
イスラエルとディアスポラ-カネとモノの流れとパレスチナ問題
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21520760
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
武井 彩佳 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (40409579)
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Keywords | 西洋史 / ユダヤ人 / 補償 / イスラエル / パレスチナ問題 / ホロコースト / ディアスポラ |
Research Abstract |
昨年度に引き続き本年度も、米国のユダヤ人社会からイスラエルへと向けられる物的・非物的資源の究明を試みた。中でも、非物的なイスラエル支援のメカニズムの解明に力点を置き、ディアスポラの青少年を対象としたシオニスト教育の在り方、文書館や博物館におけるホロコースト研究とその政治性、さらにイスラエル支援への非ユダヤ人の動員などについて調査を行った。このため、2010年末に約2週間、アメリカを訪れ、ニューヨークの文書館や図書館での史料収集を行った。(この史料収集のために持ち運びやすいブック型のPCを購入している) 調査の結果、ユダヤ人団体はアメリカ社会一般に対してホロコーストに関する広範囲な啓蒙活動を行っているが、これはパレスチナ問題という現在の政治問題に対する市民の姿勢にも影響を及ぼすよう意図されていることが分かった。例えば反中傷同盟(ADL)のような団体は、大学においてイスラエル支援のためにユダヤ人学生の動員を試みているが、彼らはネオナチのようなホロコースト否定者と、パレスチナ問題ゆえに反イスラエル的な姿勢を取る左翼学生を同じ土俵で扱っている。こうした姿勢は、キャンパス内で親パレスチナ要素との政治的対立が生じた場合の対応マニュアルに如実に示されている。歴史事実と現在の政治体制への評価は区別されるべきであるが、これらがあえて同じ枠内で扱われる上に、イスラエルへの非物的・道義的支援が構築されているのである。 こうして得られた知見をもとに、来年はイスラエル側からの働きかけの分析を行う。
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Research Products
(2 results)