2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ社会国家におけるキリスト教系民間福祉についての歴史学的検討
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21520761
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
中野 智世 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (90454470)
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Keywords | 社会福祉 / ドイツ / キリスト教 / 社会国家 / 民間福祉 / 社会史 / ケア |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に掲げたテーマ2の検討に着手し、ローカルな自治体福祉の現場における公的福祉と民間福祉の関係性や、両者の相互補完的役割について分析した。また、昨年に引き続きテーマ3についての検討を進め、福祉の人材供給や養成教育においてキリスト教系民間福祉団体が果たした役割を、戦後西ドイツを例に検討した。さらに、本研究全体の理論的枠組を構築するため、ドイツ社会国家史全般、および福祉国家と宗教・宗派要因に関する研究文献のサーベイを行った。具体的な研究成果は下記のとおりである。 1.自治体福祉の現場における公務員ワーカーと民間福祉団体の慈善ボランティアの活動を検討し、論文を執筆した〔「福祉の現場における家族-1920~1930年代ドイツにおける家族保護ワーカーの活動から」『比較家族史研究』〕。 2.戦後西ドイツにおけるキリスト教系民間福祉の役割について、1950年代のカリタス連盟を例に検討し、その研究成果をドイツおよび日本で口頭発表した〔社会国家ワークショップ:同志社大学(2011年7月16日)、社会法・政策ワークショップ:ミュンヘン大学・マックス・プランク研究所(2011年9月8日)、ドイツ現代史学会:東京大学(2011年9月17日)〕。 3.ドイツ社会国家史研究をめぐる近年の研究動向について口頭発表を行ったほか〔「ドイツ社会国家論の再検討-近年の研究動向から」〕、西欧福祉国家研究における新しい研究視角としての宗教(キリスト教)に着目し、研究動向のサーベイをまとめた〔「西欧福祉国家と宗教-歴史研究における新たな分析視角をめぐって」〕。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史資料の収集・分析、執筆等においては、おおむね当初の計画通りに進展している。ただし、研究成果の発表においては、共同執筆者との足並みがそろわない、出版社の都合で脱稿した原稿が中々刊行にいたらないなどの理由により遅れが生じている。とはいえ、本研究期間終了までにはこれらの問題も解決すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に沿って研究を進める予定であるが、当初、今年度に報告を予定していたKaiser教授のコロキウムが、教授の退職により開講されなくなったため、今夏の報告は見送る予定である。 また、テーマ2については、今夏の史料調査の結果によっては細部を変更する可能性がある。すでに昨年より、市文書館等で自治体レベルの史料調査をすすめているが、現在のところ、戦災等で十分な史料が残されていないためである。その場合、3都市比較ではなく1都市の事例研究とする。
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Research Products
(6 results)